テスラ モデル3 納車式典の様子 (Tesla Model 3 Handovers)

イーロン・マスクが創造する企業ユーフォーリア

 

2017年7月28日(金)、カリフォルニア フリーモントにあるテスラ自動車の工場敷地で行われたTESLA MODEL 3 納車式の動画が興味深かったのでアップしました。

最初の50台のうち20台が試験車両として除かれ、残りの30台が初納車。新規オーナーはテスラで働く従業員が基本とのこと。

式典で壇上に立つイーロン・マスクはまるでロック・スターのようです。

聴衆の喜びに溢れた騒ぎぶりは、かつてマック・ワールドでS.ジョッブスと信者たちが共有したユーフォリアに近いものを感じます。

「一番のチャレンジは、現在抱えている多数の予約オーダーに応えるべく、新型のモデル3を迅速に大量に製造する事。これからが大変だよ。地獄へようこそ!(笑)。でもみんなはもうそれのベテランだよね、いいかい、地獄(過酷な状況?)を通り抜けなきゃいけない時の方法はひとつ。ただ突き進むのみ、だよ」

と壇上のEMが笑いながら言うと、なんと従業員たちは歓喜の声を挙げます。かつてS.ジョッブス時代のアップルを感じる部分。
(全ての企業経営者が夢見るであろう熱烈な企業ファシズムが浸透しているかのよう)。

翌 29日付け(現地時間)ニューヨーク・タイムズ紙でもこれを報道してますが、「多大なプレ・オーダーに応えることができるのか?それがテスラに課された課題」と批判的なトーン。

https://www.nytimes.com/…/bus…/tesla-model-3-elon-musk.html…

式典で壇上に立つEMはそれらの問題へのソリューションとして;

1、今年の暮れまでにモデル3を5,000台/week生産体制に持っていく。

 

2、ネヴァダに設立した世界最大のリチュウム電池工場のギガ・ファクトリー
(この工場ひとつで、その他の全世界のリチュウム電池生産量を凌駕。ギガ・ファクトリーを紹介したwired誌の紹介記事

 

3、「Super Charger」(急速充電スタンド)の設置数を2018年度中に現在の3倍に増設。世界で乗り回せる車となる。

「Super Chargerは単に急速充電スタンド。充電時間を気にしなければ今だって電源があれば世界のどこでも乗り回せるんだ(EM)」

 

また、リスクとして彼が言及したのは;「モデル3では1万にも及ぶ専用部品が用いられている。部品の供給元は2/3が北米、残りの1/3がその他海外から。供給される部品の中で一番納期の遅れるものに生産のスピードが制限されてしまう。現在はこの部分の改善に最大限の努力を集約している」と。

EMの説明によると、
「モデル3には8台のカメラ、12台の超音波ソナー、4台のレーダー、10テラバイトを超える性能のコンピューターが搭載されている。ハードウェア面は来たるべく全自動運転時代に完全に対応している。現時点で生産されている他のテスラ車種も同様。これは意外と知られていない事実なんだよ」と言ってます。

最後にEMは、「同価格帯クラスで、他のどの車種もこれ以上の性能と安全性を有する車はない」と自信たっぷりに言います。

***

 

テスラ・モデル3の現地価格とスペック

グレードは2タイプ。 スタンダードが35,000ドル、ロング・レンジは44,000ドル。

 

以下、2タイプの性能比較;

Standard: 1回の充電での航続距離 220mile≒354km、0-60マイル加速 5.6秒、最高時速 130mph≒時速210キロ。

Long Range: (同上順)310mile≒500km、5.1秒、140mph≒時速225キロ

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イーロン・マスク「AIの進歩は大量失業時代の到来。ベーシック・インカムの導入が必要となる」

「AIの進歩は大量失業時代の到来を意味する。ある種のユニバーサル・ベーシック・インカム制度の導入が不可避となるだろう。

「でも、産業経済活動から不要とされた人々が大量に発生する時代に、人は生きる意味をどこに見出せば良いのか?」
         
           ↓

「脳とコンピューターの融合に解決のヒントがある」−EM

 

 

***

 

3回連続でEMのインタビューですが、大変興味深いのでまたひとつ。

2017年の2月にドバイで開催された湾岸諸国の首長や政府関係者向けと思われるWorld Government Summitというカンフェレンスでの発言から。

モデレーターが、「この場にいる各国政府関係者へ、未来に向けたアドバイスを3つ挙げてください」という問への答え。

最初の2つに関しては、すでに広く認識されている事実を復唱しているようにEMは話します;

1、AI開発の管理。人々に危害を与えないように政府が監視すること。

2、20~30年で自動運転が大勢を占める世の中になる。現在の3倍の電気が必要となる。それだけの電気が供給できる体制の準備。

と、ここまでは一般的に理解されている部分。しかし、

3、来たるべく大量失業にどう対応するのか? 答えはユニバーサル・ベーシック・インカム制度の導入。他に選択肢はないと思う。

人間にできて機械やロボットにできない仕事はほとんど無くなる。僕はそれを望んでいる訳ではない。ただ、そういう世界の到来が多分避けられない、と考えている。

AIによる生産物は大変優れたクオリティーのものがふんだんに供給されるようになる。値段も飛躍的に下がる(AI/ロボットに課税し、それをユニバーサル・ベーシック・インカムの財源にする。それでも企業は十分な利益を得られる、としています)。

しかし一番難しいのは、その状況で人々は生きる意味をどこに見出すのか?という部分です。多くの場合、人は職業に自身の生きる意味を見出している。この部分への対応を考えなくてはいけない。私たちが直面する大変難しい問題となるでしょう。

我々が望むような、希望の持てる世界を創って行くにはどうすれば良いのか?

 

***

 

ここでEMは話題を「脳とコンピューターの融合」へ振ります。

1、ちょっとSFみたいな話になるけど、人はすでに第三レイヤーの脳を獲得している。それは一種のデジタル・サイボーグともいえる。
大脳辺縁系(感情や動物的本能を司る部分)、大脳皮質(思考や計画)、そして第3階層としてデジタル・レイヤーの存在。

彼が例として揚げたのが; 「グーグルで瞬時に何かを調べたり、地球の裏側の人と話をしたり、死んだあともSNSやEメールは残り、あなたの痕跡(ghost)は生き続ける」

2、我々はコンピューターをキーボード、またはタッチ・パッドでコントロールしているが、現状のスピードは非常に遅いもの。普通で10bit/sec、大目にみても100bit/secが限界だろう。

でもコンピューターは兆bit/sec単位でコミュニケートする。

生体(脳)とコンピューターとのインターフェースの伝達帯域幅が飛躍的にアップすることで、コンピュータと人間の共生や、コントロールの問題、無用性の問題、それらへの解決の糸口が見つかると思います。

(ちょっと「お気軽」な感じのモデレーター氏、言葉を失って、、、「あーむ」と唸り声)

EM: 多分に深遠な内容で恐縮ですけど、、、。

 

***

 

最後の部分をどう捉えれば良いのか、、、、。

本来ならこのお気楽モデレーター氏は「コントロールとはどういう意味ですか?」と訊くべきだと思うのですが、意図してなのか単に興味が無いのか話の方向を変えてしまいました。残念。

コントロールと無用性への解決策、という言葉から想像されるのは、キャメロン・クロウの映画「Vanilla Sky」 のような人工冬眠カプセルで眠らせて、希望通りの人生を生きている夢を見させる会社の話。

そうなると、近未来では失業者はカプセル行き?
大量の人々がカプセルの中で眠りながら、夢の世界で生きる時代の到来。

もし、EMがこの場でほのめかした解決策へのヒントがこんな方面を向いていたのだとしたら、、、ちょっと怖いですね。

(すでにイーロン・マスク氏は2016年に設立されたNeuralinkの創立メンバーのひとりとして名を連ねており、この会社は脳とコンピューターとの融合を研究しているそうです)

 

(抜粋部分は動画の22m35s辺りから)

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AIは人類が直面する最大のリスク – 2 (イーロン・マスク)

「ひとたびAI開発の現状が認識されれば、人々は大変な恐怖を感じるだろう。それほど深刻な状況なのです(EM)」

***

先の投稿に続いて、同じNGA会議(全米州知事連合?)の最終日のElon Muskの「AIの脅威」に関する応答から、興味深い部分をもうひとつ抜粋しました。

 

***

 

アリゾナ州知事の質問:「まだ何ものと判断もつかない分野(AI)で、我々(政治家)はどのようにして規制基準を設けていけば良いのか?」

以下、EMの応答:

1、まず現状認識だ。現在のあなた方はそれすらできていない。

2、チェック機関の設立。目的はAI開発の現状を認識し評価すること。

3、そして規制の導入、簡単な事です。

 

そして彼は以下を付け加えます。

4、当然、AI企業は反対するだろう。僕の会社は反対しないけどね。彼らは、そんな事をしたら進歩が止まるだの、中国へ逃げ出すだの、タワゴトを言いだすだろう。でも実際には彼らはそんな事をしません。ボーイングが米国から出ていったか?出てないですね、アメリカ国内にとどまってます。自動車産業だって同様。
規制をかけると規制のゆるい国外へ逃げる、なんていうのは非常に高慢な態度だと思います。

 

最後にEMが言ったのは:

5、目的は政府レベルでの注意喚起(awareness)です。ひとたび「awareness」が向けられれば、人々は大変な恐怖を覚えるはず。

それ程、深刻な状況なのです。

 

以上
(抜粋画面は動画の1h20m44s辺りから)

 

***

 

以下、完全な私感で大変恐縮なのですが、メディアやビジネス・ニュース等で取り上げられる「AI」は、それいけ乗り遅れちゃいけないビジネスチャンス的に、一種のバズワードとなっています。

でも、この分野の最先端に身を置くEM氏の頭はすでに何光年も先を見据えているかのようです。

イーロン・マスク氏も共同設立者として昨年(2016年)立ち上げられたNeuralink(2016設立)は脳とコンピューターの融合を研究する会社。

どうせこの分野で悪が台頭するのなら、自分たちが先頭を走ることにより、台頭してくる悪を抑え込もうとしているのかもしれません。

 

以上
(抜粋画面は動画の1h20m44s辺りから)

 

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AIは人類にとって現在最大のリスクだ。 イーロン・マスク

AIは人間のやれることは全てできるようになっている。それも人間の能力をはるかに超えるレベルでね。もし、そんな力が自由に使えるとしたら、あなたは何を考えますか? イーロン・マスク

 

***

 

先週(2017年7月13日〜16日)ネヴァダ州で行われたNGA(党派を超えて全米の州知事が集うコンフェレンス)での最終日、テスラスペースXの設立者でもあるイーロン・マスク氏が登場し、その動画がアップされています。

講演の後半では各州知事たちとの質疑応答の時間が設けられ、コロラド州知事から、「AIは現在人類が直面する最大のリスクとあなたは言っているが、それに対して我々は何をすべきか?」と問われた際のイーロン・マスク氏の応えを以下に要約しました;

イーロン・マスク

・まずは現状把握から始めなくてはいけない。大半の政治家はそれを怠っています。

・政府の役割のひとつは、一般の人々の幸福の実現にあると信じている。だから規制が必要なのです。

・昨年、Googleの子会社が開発したAI(Alpha Go)が囲碁の世界チャンピオンを打ち負かしました。囲碁は非常に難易度の高いゲームで、コンピューターが人間を負かすのはまだ20年先と言われていました。今なら世界のトップ50人を同時に打ち負かす事だって可能です。

・すでにロボットは完成の瞬間から二足歩行を可能としています。なんの訓練もなしにね。

・このように、現在のAIの進歩のスピードは脅威的なのです。

・だが、1番の脅威はネットワーク内で活動する「DEEP INTELLIGENCE」です。

 

以下、彼が例として挙げたげた話の概要;

1、仮に投資目的でAIを使ったとする。目的は保有株(もしくはポジション)の価値の最大化。

2、ひとつの方法として戦争を起こす、というやり方がある。

3、手持ちの防衛関連株をロング・ポジション(将来の値上がりを期待)、民需株をショート・ポジション(値下がりを期待)にしておく。

4、そこで戦争を起こす。
Fake Newsを流し、メールアカウントを乗っ取り、Fake プレス・リリースを流すなどの情報操作を行えば戦争は起こせる。

***

ここで彼は「おっと、どうやら墓穴を掘っちゃったね。僕はあくまでも仮定の話をしているだけだよ」と言いながら、引き続き以下の例を挙げました。

2度目のマレーシア航空撃墜事件を覚えてますか?ウクライナとロシア国境地帯で起きた事件です。あれによってロシアとEUの関係は極度に緊張しました。
もし、上記のような投資目的でAIが使われたとしたら、、、」

1、まずはマレーシア航空の飛行ルート・サーバーにハックし、飛行ルートを紛争地域上空に変更する。

2、偽情報で(「anonymous tip」と言ってます)旅客機の真上に敵航空機が飛んでいる信号を送りつける。

そうすれば、後はご存知のような結果となる、と身振りで、、。

(会場はし〜んと静寂。その後、苦笑の声がチラホラ)

****

 

EM、一般には認識されていないリスクの実態を肌で感じているのでしょう。

抜粋の部分は動画の1h16m28s辺りからです。

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ピーター・ティール;「エンジニアとアーティストが未来を創る」  

Peter Thiel 氏の講演動画より

 

ペイパルの共同創立者でシリコンバレーを代表する投資家のピーター・ティール氏の講演の内容がYouTubeの中で数多く紹介されています。

その中のひとつ、2013年度のSXSWコンフェレンスで行われた講演よりのピックアップ。

この講演は、起業家を目指す人々に向けたものですが、その中で日本の置かれた状況をで解説してる部分が興味を引きました。

縦軸(y軸)の上部に「将来に希望」、下部が「将来を悲観」、横軸(x軸)の左側に「明快な目的を持つ」、右側に「不確実で何をしたら良いかわからない」、という表を掲げています。

 

バブル崩壊以降の日本は(ヨーロッパも)右下の「将来に悲観」&「何をして良いかわからない」ゾーンに位置してます。

現在の中国は左下、「将来に悲観(高い貯蓄率)」&「目的は明快(先行国のコピーによる発展)」ゾーン。

ティール氏は別のレクチャーで「グローバリゼーションとは、先行者の成功事例をコピーして追いつく活動」と定義しています。

同じ表を用いて、彼の本業の一つでもある投資コンサル(ヘッジファンド運営)っぽくポートフォリオ解説をしている部分では、日本の位置する「将来に悲観」&「何をして良いかわからない」ゾーンでは「貯金や保険を買うしかない」。

ひるがえって、左上の「将来に希望」&「目的が明確」ゾーンでは、「工学とアート」が栄え、そこに向かう人々が増える。

Another way to look at the determinate vs. indeterminate question is through the lens of substance vs. process. What people do and what technology they build will depend on how they view the future. From an indeterminate perspective, they won’t know what to build. There’s nothing that specifically looks promising; it’s all just a distribution. So they will think less substantively and more procedurally. You want to have the right process for navigating the distribution. This tracks the HP board debate we talked about earlier: it’s Perkins’ old-school substance (lets talk tech and engineering) versus Dunn’s process. If everything is indeterminate, it’s presumptuous to think that the board could think or know anything about the future. How each quadrant shakes out in practice looks something like this: Optimistic, determinate: Engineering and art. Very specific engagements. Optimistic, indeterminate: Law and finance. Law is a process of applying specific rules, not a certain substantive result. You assume that by following the process you end up making things better. And finance is pretty thoroughly statistical. Pessimistic, indeterminate: Insurance. You can’t make money but you can protect against expected losses. Pessimistic, determinate: Wartime rationing.
H. Substance vs. Process

 

ここでのシール氏の論旨は、起業の目的を金儲けだけにとらわれるのではなく、この「工学技術とアート」のゾーンの繁栄を目的とすることこそが、より良い世界を築く、と語っています。

表で言い換えれば、「未来に希望を持ち、人々が明快な目的意識を持てる社会」の実現ですね。

外見は旧ナチ親衛隊将校のようでちょっと怖そうだけど、実はストレートで熱いハートの持ち主なのが伝わってきます。

ちょっと吃りながらの独特な彼の話し方は声の質も良いし、論旨が非常に明晰なので聞いていてスカッと気持ち良いですね。

 

https://youtu.be/iZM_JmZdqCw?t=10m44s

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Khan Academy  ー オンライン教育サイト成功の理由

Khan Academy 主宰のS.カーン氏

シリコンバレー発の教育動画サイト、Khan Academyが成功した理由。

 

ご存じの方も多いかと思いますが、サルマン・カーン氏が主宰するカーン・アカデミーは、閲覧無料な上に大変優れたコンテンツを展開している素晴らしいオンライン教育サイトです。

例として添付したのは数あるコマの中から数学の「微分という考え方のイントロ」を解説している動画。

http://www.khanacademy.org/video?v=EKvHQc3QEow

 

6,000本以上ある教育動画シリーズは世界中で閲覧されており、ここで添付した動画も100万ビューを超えてます。

そもそもの発端は、創設者のサルマン・カーン氏(インドの人気映画俳優とは別人)が、数学で悩む従兄弟の勉強を見てあげている際、YouTubeに自身で制作レクチャー動画をアップしたのがキッカケとなり、それが瞬く間に拡散していくうちにKhan Academyの誕生となりました。

 

当初は試行錯誤から始まった「オンライン家庭教師」

一番最初はスカイプ等でPC画面を通じての教えを試みたそうですが、そこでは期待した成果が得られませんでした。

理由は、オンラインで繋がりながら画面の向こう側とこっち側で学習を進める際、カーン氏は生徒がどこまで理解しているのかを把握できないままにレクチャーを進めなくてはいけませんでした。時には生徒はカーン氏に遠慮してしまい、「解らない」と言い出せないままにレクチャーが進んでしまいました。結果的には生徒の理解の度合が不完全なまま、レクチャー時間が過ぎてしまっていたのです。

そんなある日、友人から「YouTubeを試してみたら?」というアドヴァイスを受けて自主制作のレクチャー動画をアップ(カーン氏はMITでコンピューター・サイエンスと数学を専攻)したところ大変効果があがるのを実感します。

「当時の僕はYouTubeなんて、猫がピアノ弾く動画とかばかりの取るに足らないメディアとしか捉えていなかったんだけどね」とカーン氏は語ってます。

 

上手く行った理由;

1、当時YouTubeの規定では動画の長さは10分以内という制限があった。それが功を奏した。
①結果的に、要点を簡潔にまとめたコンテンツとなった。
②人の集中力の持続時間は15分程度が限度。各コマが、集中力維持ができる理想的な長さに収まった。

2、生徒の心理面でのメリット。
YouTube動画なら、生徒は解らない場合は動画を止めたり、戻したり、再生したりできる。
ここでは先生の顔色を伺う必要がない。よって生徒は心理的な負担から解放される。
実は「良い子」ほど、先生の期待を裏切らないようにと失敗を恐れて無理(不完全な理解のまま先に進もうとしてしまう)をする。

***

 

彼がYouTubeにアップした動画は従兄弟のみでなく、世界中に拡散を始めます。ほどなくカーン氏はそれまで勤めていたヘッジ・ファンドを辞して天職を掴みます(「収入は良く、生活も安定していたけど、ヘッジ・ファンドでの日々は惨めなものだったよ」と後のインタビューで彼は語っています)。

 

ビル・ゲイツの熱心な後援

実はかのビル・ゲイツ氏もカーン・アカデミーの熱心な後援者の一人です。

カーン氏: 「スタート当初、知人から『ビル(ビル・ゲイツ)が自分の子供に算数を教える良い方法がないものかと探している、という話を聞いて君の動画を紹介しといたよ。もし彼が気に入れば応援してくれるんじゃないかな』と言われた。彼(ビル・ゲイツ)は一日中膨大な量のデシジョン・メイキングを行っているので、普段ならオーケーかノーか、瞬時に返事がくると聞かされていたんだけど、その時はなかなか返事がなかったんだ。実は、ビル本人が動画レクチャーのシリーズに1日中見入っていたことを後で聞かされて嬉しかったよ!」

ゲイツ氏は即座にカーン氏と面会し、このサイトの将来についてヒアリンをし自身の運営するゲイツ財団として何ができるかを相談したそうです。以来、彼はカーン・アカデミーの熱心な後援者となりました。(ビル&メリンダ・ゲイツ基金からカーン・アカデミーに寄贈された金額も現在では 1,000万ドルを超えています)

 

カーン・アカデミーを推薦するビル・ゲイツからのメッセージ動画

僕自身、今でも何かを確認する際にこれらの動画を見るし、自分の子供たちもこのサイトで学ぶことが大好きなんだ」

「これは人々に対する莫大な贈り物だと思う。みんな是非チェックするべきだよ!」

(ビル・ゲイツ)

 

 

学校教育が産み出す「スイス・チーズ症候群」

YouTubeを使ってのレクチャーが優れているポイントをカーン氏は以下のように説明しています。

「この方法は理想的な個別指導なんだ。学習者の理解レベルに合わせ、基礎を100%理解するまで繰り返して学べる。高度に洗練された数学を理解しようと思うなら、基礎の積み上げによる学習が欠かせないんだ」

「でも学校教育では、テストで90点取れば優秀とされて次の段階に進んでしまう。それはスイス・チーズのようなもの。外見は完璧に見えても、中身にはいくつもの穴が空いたままだ」

「ミスした10点部分の理解がなされないまま先に進むことで、いつしか数学の壁につきあたる。そこでは後戻りや確認するチャンスもない。カリキュラムは先へ先へと進んでいく。すると優秀であったはずの子供も、いずれは『数学嫌い』となってしまう」

***

 

動画の設定を開くと気がつくと思いますが、いろいろな国の言葉に字幕部分が翻訳されています。シリーズが世界中で認められている証しでしょう。

日本でもこの動画シリーズの翻訳ボランティアを募集して運営している日本語版サイトもあります(東南アジアや東欧圏諸国に比較して、まだまだ規模は小さいようですが)。

でも実は、カーン氏の声と喋りこそが価値の源泉だと思います。

まるで生徒の横に一緒に座っているような感じの親みや温かみを持ちながら、理路整然と明瞭に解説がされていく彼の語りの真髄は、事務的な翻訳ではなかなか再現が難しいように思いました。

***

数学のみでなく、彼の解説による金融・経済や歴史も面白いので、おりををみてまた紹介したいと思います。

 

 

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ジャック・マー 「これからの30年は、現在の30歳、30人以下の企業がリードする」

これからの30年はITテクノロジーの応用化の時代となる。中心となるのは現在30歳の人々、従業員数が30人以下の企業、これらが次の世界を良くしていく。30年、30歳、30人以下の企業。これがキーワードだ。 ジャック・マー

 

 

今年(2017年)初頭にスイスのダヴォスで開催されたWorld Economic Forum 2017 に出演したアリババのCEO ジャック・マーの動画が興味深かったのでそれのご紹介&簡単な要約です。

司会者: トランプ大統領との会談はどんな感じでしたか?

ジャック・マー(以下JM): 「アメリカの中西部の農作物をアリババのサービスで中国市場で売る話をした。彼は大いにオープンマインドな態度で熱心に私の話を聴いていたよ」

 

司会者: 中国がアメリカから職を奪っている、と指摘されていますが。

JM: 「30年前、僕がビジネスを学び始めたとき、グローバリゼーションによるアウトソーシングは素晴らしいアイディアと言われていた。
The World is Flat」(T・フリードマン著)という本も読んだよ。
製造業やサービス等のローエンドは中国やインドに任せ、IT、テクノロジー、ブランドをアメリカが担うというものだ。アメリカの企業はそれを実行し、結果はトップ100社の企業群に莫大な利益をもたらした。
問題はそこで稼いだ莫大な金の行き先だ。
アメリカはその30年間に13もの戦争を起こした。そこでは$14.2 trillion(1400兆円)の金を使っている。
儲けた金のほとんどがウォールストリートへ行ってしまった。
そして2008年の金融危機では$19.2tril.の金が消え、34mil.の職が失われた。

もしそれが一部でもアメリカ国内のインフラや労働者のために使われていたなら、現在は全く違う世の中になっていた筈だ。

グローバリゼーションはInclusiveであるべきだ。
Globalization is great stuff, but should be incluisive
(ここで用いられているinclusiveの意は、現在進行中のグローバリゼーションが、大資本や大金融のみではなく、小さなビジネスや個人にも恩恵が授けられるような包括的なものであるべき、という意)
そこで稼いだお金は自国の国民のために使うべきだ。
アメリカの問題は、稼いだ富を正しく配分していない部分にあるんだよ。

 

司会者: アマゾンとアリババのビジネスモデルをどう評価しますか?

JM: 「 どっちのモデルも正しいと思いたい。じゃなければ世の中つまらないだろう?
アマゾンは『帝国』だ。売買の全て、在庫管理やロジスティックスまで全て自分たちで賄っている。
僕たちはデータ・カンパニーだ。そしてEco Systemのようなものだ。
僕たちはEWTP(Electric World Trade Platform)と呼ぶシステムを推進している。
全ての人々や組織、特に以前は資本市場から相手にされなかったようなスモール・ビジネスや個人を応援(Empower)しているんだ。

 

司会者: 海賊商品が横行するアリババへの批判とクレジット・システムに関して。

JM: 「海賊商品問題とは、人々の持つ欲望との戦いだ。ビッグデータで追跡して『Bad Guys』を探し出し、逮捕等の協力もしている。
詐欺の手口を研究してそれをコンピューターに学習させていた。
今ではそれがAIと世の中で呼ばれるものになっているが、僕たちはそんな名称が登場する以前からそういうことを始めていたんだ。
同様に、ビッグデータを駆使したSesame Creditという評価システムで、取引に携わる個人の信用評価ができるようにしている。今ではこれが個人の社会的信用を計る尺度として広く認識されるまでになっている。
笑い話のようだけど、娘のデート相手の素性を見たり、家を借りる際、借り手の信用度合いを見るために人々がアリババのセサミ・クレジットを見て確認しているんだよ。

 

司会者:ハリウッド進出に関して

JM:  「幸福と健康(Happiness & Health)という2つのH路線さ。
今日、金持ちも貧乏人も人々は皆ハッピーじゃないように僕には見えるんだ。だからエンターテインメントでハッピーにしたい。それに中国のヒーローはみな最後に死んじゃうんだよ。ハリウッドのヒーローは絶対に死なないだろう? 僕も死なないヒーローの方が好きなんだ(笑)。

 

観客からの質問1: 「米中貿易戦争」に関して。

JM: 「戦争を始めるのはとても簡単なことなんだ。でも戦争を終わらせるのがどんなに大変なのかは歴史が証明している。貿易で人々は価値や文化を交換しながら相手を理解する。貿易が止まった瞬間に戦争が始まる。だからこそ貿易は大事なんだ」

「仮に、アリババを潰せば米中戦争を阻止のに役立つ、なんて事態になったとしたら、僕は喜んで会社を潰す」

 

 

観客からの質問2: ビッグデータを悪用し、それを司る独裁者ような存在にならない自信はありますか?

JM: 「未来のことは誰にもわからない。明日、僕がおかしくならないという保証はできない。だから僕は早くこの職を辞して次の人生に移りたい。僕は仕事をするためにこの世に生まれたわけじゃない。人生を楽しみたいんだ。教職にも戻りたいし、また学校にも行きたい。オフイスで死ぬのではなく、どうせならビーチで死にたいね(笑)

 

ジャック・マーからのひと言

JM:  「最後にひとだけ言いいでしょうか? ここに集まった皆さん、そして各国の政府に伝えておきたい事があります。30年、30歳、30人以下の従業員の会社。この3つに注目しておいて欲しい
テクノロジーが世の中の隅々にまで浸透するのには50年かかる。最初の20年はテクノロジー自体をメインとした会社の隆興する時代だ。FB、e-bay、Google、Amazon、Alibaba、そんな会社たちがそうだ。それはもう放っておこう。これからはその先の30年間に注目してほしい。テクノロジーの応用が重要な分野になるからだ。
それを担うのが現在30歳の人たちだ。彼らはインターネット世代。そしてそんな人たちの興す従業員30人以下の会社に注目して欲しい。世の中をもっと良くする可能性がそこにある。

 

 

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