Khan Academy 主宰のS.カーン氏
シリコンバレー発の教育動画サイト、Khan Academy が成功した理由。
ご存じの方も多いかと思いますが、サルマン・カーン 氏が主宰するカーン・アカデミーは、閲覧無料な上に大変優れたコンテンツを展開している素晴らしいオンライン教育サイトです。
例として添付したのは数あるコマの中から数学の「微分という考え方のイントロ」を解説している動画。
VIDEO
http://www.khanacademy.org/video?v=EKvHQc3QEow
6,000本以上ある教育動画シリーズは世界中で閲覧されており、ここで添付した動画も100万ビューを超えてます。
そもそもの発端は、創設者のサルマン・カーン氏(インドの人気映画俳優とは別人)が、数学で悩む従兄弟の勉強を見てあげている際、YouTubeに自身で制作レクチャー動画をアップしたのがキッカケとなり、それが瞬く間に拡散していくうちにKhan Academyの誕生となりました。
当初は試行錯誤から始まった「オンライン家庭教師」
一番最初はスカイプ等でPC画面を通じての教えを試みたそうですが、そこでは期待した成果が得られませんでした。
理由は、オンラインで繋がりながら画面の向こう側とこっち側で学習を進める際、カーン氏は生徒がどこまで理解しているのかを把握できないままにレクチャーを進めなくてはいけませんでした。時には生徒はカーン氏に遠慮してしまい、「解らない」と言い出せないままにレクチャーが進んでしまいました。結果的には生徒の理解の度合が不完全なまま、レクチャー時間が過ぎてしまっていたのです。
そんなある日、友人から「YouTubeを試してみたら?」というアドヴァイスを受けて自主制作のレクチャー動画をアップ(カーン氏はMITでコンピューター・サイエンスと数学を専攻)したところ大変効果があがるのを実感します。
「当時の僕はYouTubeなんて、猫がピアノ弾く動画とかばかりの取るに足らないメディアとしか捉えていなかったんだけどね」 とカーン氏は語ってます。
上手く行った理由;
1、当時YouTubeの規定では動画の長さは10分以内という制限があった。それが功を奏した。
①結果的に、要点を簡潔にまとめたコンテンツとなった。
②人の集中力の持続時間は15分程度が限度。各コマが、集中力維持ができる理想的な長さに収まった。
2、生徒の心理面でのメリット。
YouTube動画なら、生徒は解らない場合は動画を止めたり、戻したり、再生したりできる。
ここでは先生の顔色を伺う必要がない。よって生徒は心理的な負担から解放される。
実は「良い子」ほど、先生の期待を裏切らないようにと失敗を恐れて無理(不完全な理解のまま先に進もうとしてしまう)をする。
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彼がYouTubeにアップした動画は従兄弟のみでなく、世界中に拡散を始めます。ほどなくカーン氏はそれまで勤めていたヘッジ・ファンドを辞して天職を掴みます(「収入は良く、生活も安定していたけど、ヘッジ・ファンドでの日々は惨めなものだったよ」 と後のインタビューで彼は語っています)。
ビル・ゲイツの熱心な後援
実はかのビル・ゲイツ氏もカーン・アカデミーの熱心な後援者の一人です。
カーン氏: 「スタート当初、知人から『ビル(ビル・ゲイツ)が自分の子供に算数を教える良い方法がないものかと探している、という話を聞いて君の動画を紹介しといたよ。もし彼が気に入れば応援してくれるんじゃないかな』と言われた。彼(ビル・ゲイツ)は一日中膨大な量のデシジョン・メイキングを行っているので、普段ならオーケーかノーか、瞬時に返事がくると聞かされていたんだけど、その時はなかなか返事がなかったんだ。実は、ビル本人が動画レクチャーのシリーズに1日中見入っていたことを後で聞かされて嬉しかったよ!」
ゲイツ氏は即座にカーン氏と面会し、このサイトの将来についてヒアリンをし自身の運営するゲイツ財団として何ができるかを相談したそうです。以来、彼はカーン・アカデミーの熱心な後援者となりました。 (ビル&メリンダ・ゲイツ基金からカーン・アカデミーに寄贈された金額も現在では 1,000万ドル を超えています)
カーン・アカデミーを推薦するビル・ゲイツからのメッセージ動画
VIDEO
「僕自身、今でも何かを確認する際にこれらの動画を見るし、自分の子供たちもこのサイトで学ぶことが大好きなんだ」
「これは人々に対する莫大な贈り物だと思う。みんな是非チェックするべきだよ!」
(ビル・ゲイツ)
学校教育が産み出す「スイス・チーズ症候群」
YouTubeを使ってのレクチャーが優れているポイントをカーン氏は以下のように説明しています。
「この方法は理想的な個別指導なんだ。学習者の理解レベルに合わせ、基礎を100%理解するまで繰り返して学べる。高度に洗練された数学を理解しようと思うなら、基礎の積み上げによる学習が欠かせないんだ」
「でも学校教育では、テストで90点取れば優秀とされて次の段階に進んでしまう。それはスイス・チーズのようなもの。外見は完璧に見えても、中身にはいくつもの穴が空いたままだ」
「ミスした10点部分の理解がなされないまま先に進むことで、いつしか数学の壁につきあたる。そこでは後戻りや確認するチャンスもない。カリキュラムは先へ先へと進んでいく。すると優秀であったはずの子供も、いずれは『数学嫌い』となってしまう」
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動画の設定を開くと気がつくと思いますが、いろいろな国の言葉に字幕部分が翻訳されています。シリーズが世界中で認められている証しでしょう。
日本でもこの動画シリーズの翻訳ボランティアを募集して運営している日本語版サイト もあります(東南アジアや東欧圏諸国に比較して、まだまだ規模は小さいようですが)。
でも実は、カーン氏の声と喋りこそが価値の源泉 だと思います。
まるで生徒の横に一緒に座っているような感じの親みや温かみを持ちながら、理路整然と明瞭に解説がされていく彼の語りの真髄は、事務的な翻訳ではなかなか再現が難しいように思いました。
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数学のみでなく、彼の解説による金融・経済や歴史も面白いので、おりををみてまた紹介したいと思います。
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