「クリーン革命」 The Clean Disruption – Tony Seba ①前編

 

「Clean Disruption、それはテクノロジーによる革命だ」Tony Seba氏

クリーン革命。それは避けられないし、すでに始まっている。

Tony Seba (スタンフォード大講師)

 

今回取り上げたのはスタンフォード大の講師であるTony Seba氏の講演「Clean Disruption」(2006年にスウェーデンのオスロで開催されたSwede Bank主催のNordic Energy Summitの動画より)。

Seba氏の著書「Clean Disruption of Energy and Transportation」(2014年)に沿った内容ですが、数多くの講演をこなしている方だけあって、大事な事実が非常にわかりやすく解説されています。YouTubeではいくつかの講演の視聴が可能です。現在起きつつあるエネルギーと交通の大変革を解説したものとして非常に優れたものだと思います。詳細をお伝えできるように前編と後編の2回に分けての紹介としました。

注):「Clean Disruption」を正確に訳すれば「クリーン破壊=(リニューアブル・エネルギーによる既存システムの変革)」でしょうか。 

 

■ Disruptionとは?

まずは講演の冒頭部で示された以下の写真をご覧ください。

1900年当時のニューヨーク5番街を行き来する馬車の群れ。自動車が一台走っているのを見つける事ができますか?

1900年のイースターの朝に撮られたNYC 5番街の写真ですが、大通りを行く馬車の列の中に自動車が1台走ってます。見つける事ができますか?

赤く囲まれた部分に車が1台走っていました。

 

13年後、同じ場所を撮った写真が示されます。今度は自動車の波の中に馬車が1台走っています。

1913年のNYC 5番街。車の波の中に1台の馬車。

 

Seba氏:「これがDisruptionです。Disruption自体は目新しい概念ではありません。馬は何千年もの間、我々の交通手段として使われてきました。しかし、たった13年程で都市における交通手段は自動車に取って代わられてしまったのです」

 

Seba氏は「Disruption」を以下のように定義しています。

「新たな製品・サービスによって新規にマーケットが創出される。そして、既存の製品・マーケット・産業の著しい弱体化・変容・破壊をもたらす

 

Seba氏: 「このように今までのDisruptionは、より安くて優れた商品やサービスが登場することによって引き起こされるのがパターンとなっていました」

「ところが、近年のDisruptionには従来とは異なる法則が働いているようなのです」

 

 

■ なぜ専門家は将来予測を誤るのか?

 

話は1980年代に移ります。

「1985年、当時最大のテレコミュニケーション企業であったAT&Tは、自社が開発した携帯電話の将来性に関する予測をマッキンゼー&カンパニーに依頼しました」

AT&Tの開発した携帯電話市場の将来性予測と実際の差は120倍!

「マッキンゼー&カンパニーが報告した予測は、2000年には90万人の契約者が見込まれる、というものでした」

「ところが、実際の1900年度の携帯電話契約数は1億900万人でした。マッキンゼーの予測した数字との誤差は実に120倍でした

「投資を誤ったAT&Tは自社の保有していた陸上電話網からの収益を失うだけでなく、新たに創出された2.4兆ドル市場への参入機会すら逃してしまったのです。現在IT関連のトップ15社にAT&Tの名前を見つけることはできません」

左グラフ:携帯電話契約者数の予測(黒線)と実際(赤色曲線)  右表:テレコミュニケーション関連企業の市場価格順位

この他にもKodak, Nokiaなど、市場を制覇していたような企業が姿を消している例はいくらでも見つかります。

なぜ専門家は将来予測を見誤ってしまうのか?

彼らは往々にして「そんなことは起き得ない」とか「まだ何十年も先の話だ」と、目新しいものを前にした際、往々にして誤った予測を立ててしまうのはどうしてでしょう?

Seba氏は理由を次のように解説しています;

 

「人々は、従来から親しんできたLinear(直線的)な進化は想像できても、近代テクノロジーのExponential(指数関数的)な進化と、それらのConvergence(収束)による変革をイメージする事が苦手なのです」

 

「ムーアの法則に代表されるように、コンピューター・テクノロジーは年間42%、2年で約2倍という指数関数的なカーブを描いて進歩しています。これは10年で1,000倍、20年で1,000,000倍、30年だと1,000,000,000倍です」

ムーアの法則。ICのトランジスターの数は2年で2倍に。

 

コンピュータの分野のみでなく、他に幾つものテクノロジー領域で同じようなExponetialな進歩を見出せます。

 

exponentialな進歩が顕著なテクノロジー領域

 

「Exponentialなスピードで進歩する複数領域のテクノロジー同士のconvergenceにより、人類が今までに経験しなかったようなスピードと規模の変化がもたらされるのです。シリコンバレーが多く領域でDisruptionを引き起こす理由がここにあるのです」

 

「iPhoneとアンドロイドが同じ年に発売になったのは、テクノロジーのconversionによりスマートフォンの市販が可能となったのがまさにその時期だったからです」

 

Seba氏が示す2016年時点でexponentialな進歩が顕著なテクノロジー領域は以下。

exponential な進歩が顕著なテクノロジー領域(2016年度)

 

■「Clean Disruption」

Seba氏: 「それでは、ここからはエネルギーと交通の分野にフォーカスして話を進めていきます」

4つの領域でのexponential 進歩とconvergenceが「Clean Disruption」を引き起こす。

以下の4つの領域のconvergenceが「Clean Disruption」を引き起こすます。

  1. エネルギーのストーレージ(リチュウムイオン・バッテリー)
  2. EV
  3. 自動運転車
  4. ソーラー

 

後編では、それぞれの領域で何が起きているのか、それらのconvergenceが引き起こす「Clean Disruption」とはどんなものなのか、詳細に見ていきたいと思います。

 

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後編を見る

 

 

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