テスラがEV車で成功した理由 (前編) ー Marc Tarpenning

Tesla 共同設立者 Marc Tarpenning

脱・石油 – それこそがテスラを起業した理由なんだ。

Marc Tarpenning – テスラ共同創業者

 

2018年現在、アメリカでは「世界で最も重要な自動車会社」とまで言われるようになったテスラですが、今回は創業者のひとりであるMarc Tarpenning が解説するテスラ成功理由の分析です。

今回は内容が濃いので、前編「なぜEVを製造することにしたのか」と、後編「誰がEVを買うのか」の2部構成にての解説になります。2017年に実施されたProduct Leader Summit にてMarc Tarpenning が行なったプレゼン動画を基にしています)

 

***

 

次のビジネスは世の中の問題を解決する事!

テスラは、Martin Eberhard とMarc Tarpenningという2名のエンジニアによって2013年にシリコン・バレーに設立されました。

彼らはそれ以前にRocket eBookという、現在のタブレット端末の祖先となるようなデバイスを用いて本が読める電子書籍サービスを開発し、2000年にその会社を$187,000,000で売却します。

潤沢な資金を得た彼らが、次なる事業を手がける際にまず最初にやったのは、現在人々が直面している諸問題を列挙することでした。それらは;

「世の中は深刻な問題に満ち溢れている」
  • 水不足
  • 環境
  • 資源枯渇
  • 農産物生産
  • アメリカにおける格差の拡大
  • 世界の貧困問題

そして選ばれたのが石油でした。

 

石油こそが諸問題の根源

なぜ石油が諸問題の筆頭として選ばれたのかをMark Tarpenning(以下、MT)は以下のように説明しています。

「石油 - それは問題の宝庫!」

MT:  「石油ってスゴイんだよ! だってあらゆる問題の宝庫だからね」

「ざっと挙げると、CO2排出による環境問題、資源の利権をめぐっての政治問題や安全保障の問題、エネルギー資源の枯渇。つまり石油への依存が解消されれば、これらの問題すべてが劇的に改善されるということなんだ」(相方のMartin Eberhardもあるインタビューで「僕は当時のブッシュ政権の外交政策に大いなる不満を抱いていた。脱・石油エネルギーを次の目標に選んだ理由のひとつがそれだった」と述べています)

石油消費の7割はクルマによるもの

「そこで僕らはアメリカで消費されている石油の内訳を調べて見た」

「石油消費の主役はクルマ」 Mark Tarpenning のプレゼン資料より

「約70%が交通・運輸の燃料として消費されており、そのうちの50%が乗用車やピックアップ・トラックの燃料として消費されていたんだ」

「脱・石油依存を目指すなら、まずは乗用車市場に目を向けるのが自然の成り行きだった」(注:テスラはシリコンバレーで起業された初の自動車会社となりました)

以下、動画でMTがプレゼンする流れに沿って解説していきます。

 

EV – その他オルタナティブとの比較

「マーチン( 協同経営者のMartin Eberhard)も僕も、電気自動車こそがその解決策だと確信していた」

「そして僕らは、電気以外の代替エネルギーで走る方式の自動車との比較検討を徹底的に行った。せっかく起業しても、もっと優れた方式の競合相手が出現してしまえば市場で敗退してしまう。そんな事は誰だって避けたいからね」

以下は石油以外の代替エネルギー候補として挙げられたもの;

「化石燃料以外の選択肢は?」 ガソリンエンジンの代替となる動力源の候補
  • バッテリーと電気モーター
  • バイオ・ディーゼル
  • クリーン・ディーゼル
  • 圧縮天然ガス
  • エタノール
  • ハイブリッド
  • 水素エンジン
  • 水素燃料電池
  • メタノール
  • 充電併用ハイブリッド
  • 太陽電池とモーター

 

FCV(水素燃料電池車)

MT: 「覚えているかな?この時代(2003年頃)、FCV(水素燃料電池車)が盛んにもてはやされ投資がこの領域に集中していた」

「だから僕らもFCVは特に注意深く吟味したんだ」

「燃料電池はどうだろう?」 FCV(水素燃料電池車)の概念図。水素を電池内部でイオン化させることによって電気を作り出す。水素自体は単体で自然界に存在しないため水素ガス生成には膨大なエネルギーが費やされることになる。
FCVとEVの効率比較。FCVの場合、電気エネルギーから水素ガスを得る段階で最善でも25%にまでエネルギーが減少。EVは85%にとどまる。

でもFCVの効率は最もオプティミスティックな理論値で計算したとしても、せいぜいEVの1/3程度だという事が判明した。

その上、水素を供給するスタンドを世の中に広めるためには膨大なインフラ投資が必要になる。

そんな非効率なものが日の目を見ることなんてあり得ない、というのが僕らの結論だった。

from ‘Inside EVs’ Hydrogen vs. EV   EVとFCVのインフラの比較ー圧倒的にEVの方がシンプル!

 

エタノール燃料車

もうひとつがエタノール燃料だ。

特にバイオマスによって生産されるエタノールに注目が集まっていた。

「エタノールはどうだろう?」 エタノール車の場合の効率はEVの約1/2

エタノール車の効率はEVの半分程度だった。でもバイオマスからエタノールを生産する複雑な過程を経るよりも、原料(家畜の糞や木材等)をそのまま既存の火力発電所で燃やして発電しても効率は同等なんだよ!

よってバイオマスによるエタノール生産にも将来性などは見いだせなかった。

トウモロコシを原料にしたエタノール生産の考察

さらにアメリカは、エタノールの原料としてトウモロコシを栽培する唯一の国なんだ。それも調べてみた。

交通エネルギーの50%をエタノールで賄う場合に必要となるトウモロコシ畑の面積(CIA資料)

上の図は交通エネルギーの50%をエタノールで賄う場合に必要となるトウモロコシ畑の面積なんだけど、これを実施するとなると他の農作物を作る余裕がなくなる。するとアメリカは自国で必要な食料を100%輸入に頼らなくてはいけなくなる。

当然こんなのは問題外だった。

「セルロース エタノールはどうだろう?」 Switch Grass(雑草の一種)を用いたCellulosic Ethanolの場合の考察。

Switch Grass (雑草の一種)から生成されるセルロース・エタノールはどうだろう? 必要な栽培面積はトウモロコシの1/4ほどに改善されるけど、それでもまだ大幅な食料の輸入が必要となる。

 

耕作地と同じ面積に太陽電池を設置したら?

でも、トウモロコシ栽培に必要とされる耕作面積に市販の太陽電池を設置したらどうだろう? そこで作られた電気をEVに充電して走らせれば、なんと32倍もの航続距離が得られるんだ。

つまり、たとえ今後どんな新技術が登場しようとEVの敵ではないという結論に僕たちはたどり着いたんだよ。

「Well to Wheel Efficiency」 燃料が採掘されてから動力になるまでの間の効率比較。グラフ左下がガソリン。効率の悪さに注目。

ちょっと付け加えておくと、たとえEVの電気を全て石炭による既存の火力発電で賄ったとしても、それでもまだエネルギー効率は現在のガソリン車より良いんだよ!

(以下後編)

***

 

2018年1月現在、世界のEV化に向けてのシフト・スピードは日々加速しているようです。でも2013年当時、EVなどは一般には注目されていない領域でした。

マーチンとマークの2人のエンジニアがEVの将来性に目を向けた理由は、「世の中の問題をテクノロジーで解決する」という非常にポジティブな精神に基づいたものでした。

金儲けや数字のゲームに明け暮れる経営者や起業家たちと一線を画す彼らの立ち位置に気がつくと思います。

人々がテスラに惹かれるユニークネス、実はこんなところに根源があるではないでしょうか?

単なるプロダクトではなく、所有することで希望ある未来が目の前に広がっていくような気持ちになれる − テスラ・オーナーはそんな想いを共有しているのではないでしょうか?

後編「EVは誰が買うのか?」にて、人々の「想い」の部分をどのようにしてデザインしていったのかを解説してみたいと思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

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「クリーン革命」 The Clean Disruption – Tony Seba ②後編

Tony Seba      https://tonyseba.com

2030年までに、すべてのエネルギーと自動車・交通システムは根底から変革される。

Tony Seba(スタンフォード大講師)

 

前編ではテクノロジーのexponential(指数関数的)な進化と、それらの convergence(収束)が現代のDisruptionを引き起こす話をしました。

後編ではエネルギーと交通の分野において、それそれのexponentialな進化と、それらのconvergenceがどのような Disruptionを引き起こすのかを詳細に見ていきます。

 

 

■「Clean Disruption」を支える4つの領域
「Clean Disruption」を支える4つの領域でのexponential 進歩とconvergence
  1. エネルギーのストーレージ
  2. EV
  3. 自動運転車
  4. ソーラー

1、エネルギーのストーレージ

■リチュウムイオン・バッテリーの需要拡大がコスト・ダウンと性能の向上を加速している

Seba氏: 「リチュウムイオンバッテリーのコストは1995年から2010年頃までの15年間にわたって毎年14%ずつ安くなっていました」

「2009年頃を境に自動車業界とエネルギー業界がリチュウムイオン・バッテリーをストーレージとして使用し始めると、需要と投資の拡大によって2010年から2014年のコストカーブは年間16%減に向上しました。最近はさらにそれが加速されています」

2009年頃を境に自動車とエネルギー・ストーレージにリチュウムイオン・バッテリーが使われ始めるとコスト・ダウンのスピードは年間-14%から-16%に加速された

そのコスト・カーブのイメージは以下のグラフになります。

リチュウムイオン・バッテリーのコスト・カーブ

リチュウムイオン・バッテリー以外の他の方式を試みても、このコスト・カーブを凌駕するものでなくては淘汰されてしまいます。

 

TeslaのGiga Factory。この工場一つで世界で生産されていたリチュウムイオン・バッテリーの総量を上回ってしまう
米ネヴァダ州に建設中のテスラのギガ・ファクトリー。

2017現在、テスラがネヴァダ州に建設中のギガ・ファクトリーが完成すると、この工場ひとつの生産量それまで世界で生産されていたリチュウムイオン・バッテリーの総量を上回ります(まだ完成はしてませんがすでに稼働を開始しています)。

原料のリチュウムはネヴァダ州周辺で採掘され、そのまま工場に運び込まれてバッテリーが製造されます。それは同じ工場で生産されるTesla Model3に搭載されて完成車となり出荷されます。

原料の加工から最終的な製品であるEVの出荷までをワン・ストップで行うことによるコスト・ダウン効果は約30%〜50%。

さらにはバッテリー性能も毎年5%づつの向上が期待できるとイーロン・マスクは公言しています。

テスラと、それ以外の企業も含め、大規模な工場が世界各地で建設されつつあります

 

Tesla Power Wall / Power Pack。 すでにコスト・カーブ予想を上回る性能を実現している

加えて、Teslaが販売する個人宅用のバッテリー・ストーレージPower Wallは$350/kWh 、業務用のPower Packになると $250/kWhを実現しており、Seba氏のコスト・カーブ予想を上回る性能をすでに2016年時点に実現しています。

 

 

■ ストーレージ・サービス  新たなビジネスモデルがDisruption をもたらす

リチュウムイオン・バッテリーのコスト・ダウンと性能向上は新たなビジネス・モデルによるDisruptionを生み出します。

リチュウムイオン・バッテリーによるストーレージ・サービス。ピーク時の電力をストーレージから賄えば電力会社が請求する電気料金よりも電気代を低く抑えることが可能になった。

自宅や店舗にリースで設置したストーレージ・サービスの台頭により、電気代金の安い夜間に電気を貯めておき、電気代の高い昼間に蓄電した電気を使うビジネスが成長しています。

従来の電力会社(Centralized Generation)が設定する電気料金は、顧客が普段使用する電気の総量のみでなく、ある瞬間に消費するピーク電力の大きさによって料金体系が段階的に決定されています。

普段はあまり電気を使わなくても、たった1回でも瞬間的に大きな電力を消費する場合は高い料金レートが適用されてしまいます。

バッテリーによるストーレージを使えば、電気料金の安い夜間に蓄電しておき、ピーク電力が必要な際にはバッテリーから供給される電気を使うことで電気料金を安く抑えることが可能になります。

上の図は、アメリカにおけるバッテリー・ストーレージ利用の際の電気代の比較(月間)。

濃い線で囲まれた部分は、2020年には24時間すべてバッテリー・ストーレージによる電力供給を行なった際の価格が$36.8になることを表しています。

例として、アリゾナ州の電力会社の供給する電気料金との比較が述べられています。

アリゾナ州公営の電力会社の料金は、昼間のピーク時は$49.5ですが夜間は$0.05と圧倒的に安くなります。

バッテリー・ストレージは約4時間の充電で翌日の電力を賄えます。料金の安い夜間電力を使えば、上の表の単価で計算すると1日の電気代は$0.2(20セント)。ひと月の電気代がたった$6.00強で済んでしまうことになります。

さらに、このビジネル・モデルが普及すると、以下の理由から従来型の電力会社は業態を大きく変えざる負えなくなります。

電力会社の発電施設は年間のピーク時の最大需要に合わせた規模で建設されています。でも、実際にピークの最大電力需要が発生するのは年間通じてもほんのわずかの時間です。

発電施設の稼働状況。フル稼働するのはほんのわずかの時間。

上の図は、発電能力がピークに近い13,189MWから9,000MWの間を赤色の四角で囲ってあり総出力の32%程になります。

縦軸が発電出力、横軸が時間なので、68%以上に発電施設を稼働させている時間は年間で517時間、5.9%程です。

上のグラフの拡大。赤色で囲った四角の部分は年間で517h。ピーク時の13,001MW~13,189MWの出力を行なっている時間はわずか7h。発電施設はこの7hのピーク電力を生み出す規模の設備を維持する必要があります。

 

遠隔地にある発電所から電気が送られてくる際、電線等の抵抗により約30%の電力が失われています。これらのコストはすべて電気料金に上乗せされています。

自宅の屋根に設置したソーラー発電と組み合わせれば、送電ロスもほとんど問題になりません。

このように、リチュウムイオン・バッテリーの進歩とコストダウンと、それによって新たに登場したバッテリー・ストーレージ・サービスは、従来型の電力会社の存在を根底から揺さぶりはじめているのです。

 

 

2、EV

2013年、米モーター・トレンド誌が選んだその年のベスト・カーとしてTesla Model Sが選ばれました。EVという枠に限定したものではなく、その年に登場したあらゆる車の中からModel Sが選ばれたのです。

Tesla Model S
Tesla Model Sは 2013年度の「カー・オフ・ザ・イヤー」に選ばれました。得点は100点満点中の103点

つまり、トップ・クラスのEVの性能はガソリン・エンジンを積んだ高性能車を凌駕するレベルに達しています。

問題となるのは価格で、最下位グレードのModel S 75でも米本国価格で$69,500(2017年現在)、最上位グレードの Model S P100D はフル装備で$160,000 という大変高価なクルマです。最上位グレードを日本で購入しようとすると約2千万円近い予算が必要です(Teslaは2017年より本国価格で約$35,000の「一般ユーザーにも手の届く」価格帯のModel 3の予約発売を開始しています)。

 

Seba氏は、以下のグラフで一般ユーザーにもEVが買いやすい価格にまで下がる時期の予測をしています。

EVのコスト・カーブ。2020年にはEVは米国のガソリン・エンジン車の平均的価格を下回る。

Seba氏:「一般的米国人の新車購入価格の平均は約$33,000です。2020年にはEVの価格はそれを下回ります。ポルシェ911の性能がビュイック(アメリカのカローラ?)の値段で手に入るのです」

「内燃機関(Internal Combustion Engine、 略してICE)で走る車はエンジンやトランスミッションなどの可動部品が2,000以上あります。EVの可動部品は極端に少ない。よってメインテナンス・コストは比較にならないほど安く済みます

 

■ EVがICE車を凌駕する理由は以下の4点+1

  1. エネルギー効率の良さ(ICE: 17.2% 、EV: 90~95%)
  2. 燃料代の安さ。EVはICE車の1/10
  3. 機械部品点数が少く維持費が安い
  4. 走行性能、特にゼロからの発進加速が圧倒的に優れている

充電インフラの拡充。Teslaや日産が展開するチャージ・ステーションの拡大。特にTeslaの展開しているチャージ・ステーション「Super Charger」は米国内止まらず、ヨーロッパや中国などを中心に世界の主要都市で急速に数を増やしています。2017年現在、米国のTeslaは自社の顧客に対してSuper Chargerの使用を無料としています。

*補足)イーロン・マスクは「エンジンを積まないEVは車体のフロント部分を緩衝部として使える。そのため、衝突の際の安全性は通常のICE車と比較すると圧倒的に高まっている」と言ってます。

 

 

 

3、自動運転車(Autonomous Vehicle)

 

■ センサー、車載用コンピューターのexpotentialな進歩がAutonomousの普及を支える

完全な自動運転は技術的には数年で可能になると言われています。問題はコストですが、センサー分野のexponentialな進歩は驚異的です。

LIDAR(センサー)の価格は$70,000 $250に

上のグラフはAutonomousに使用されるセンサーの価格推移です。

 

 

 

2000年当時、世界一の性能を誇ったASCI RED。150㎡のスペース、$46mil。

 

それが16年後には、、、

 

Autonomous制御の頭脳となるGPUプロセッサーの低価格化と小型化は驚異的。写真は2015年にNIVIDIAが発表した2.3TFGPU。価格は$59。さらに2016年には8TFGPUを発表している。

 

2000年には部屋ほどの大きさだったコンピューターの倍以上の性能のものが、今では片手で持てるほどの大きさになっています。さらに値段は100万分の1にまで低下しました。

さらに2015年、カリフォルニアの天才ハッカーGeorge Hotz氏が、後付けのAutonomousキットを999ドルで発売する、という衝撃的な発表をしました。

 

999ドルで後付けのAutonomousキットの発売を表明した天才ハッカーのGeorge Hotz氏
Hotz氏が開発した「後付け自動運転キット」

 

George Hotz本人が解説する後付けによる自動運転の動画

注)残念ながらこのビジネスはローンチを前に米国政府から販売の差し止めを命ぜられました。裁判で消耗するのを嫌ったHotz氏は自身の開発したプログラム「open pilot」を全てオープン・ソースとして2016年12月にネット上に無料公開しました

コスト的にも、完全なAutonomousが普及する下地はすでに出来上がっていると言えるでしょう。

 

 

■ Autonomousがもたらすビジネス・モデルとは?

では、そんなAutonomousがもたらすビジネス・モデルは世の中にどんな変化をもたらすのでしょうか?

その前に、すでに実現されているビジネス事例を2つ見てみましょう。

スマホで予約できるカー・シェア・サービス&ライド・シェア・サービス。クルマをオン・デマンド・サービスとして使える
広がるライド・シェアのサービス。サンフランシスコにおけるウーバー登録ドライバーの数は22,000(2015年BIデータ)に対してタクシーの数は1825台(2012年wikiデータ)とウーバーが圧倒。

カー・シェアライド・シェア。前者はレンタカーの発展形として、後者はタクシーやバズに代わる公共交通手段として米国では広がりを見せています。

 

また、自家用車を保有する際のコストに注目すると、、、

自家用車の保有は非常に非効率。平均購入価格 $31,000の資産の稼働率は4%

平均購入価格が $31,000もの資産なのに、その96%を駐車場で過ごす時間に費やしています!

ここには大きなDisruptionの下地があります。

 

次にSeba氏が示したのは、ウーバーの2015年の発表。

 

2015年、ウーバーはAuntonomousのライド・シェアの開発を発表。「ドライバーが不要になれば料金はさらに安くなる。そうすれば自家用車を所有する必然性はなくなるだろう」(ウーバーCEO)

注)2017年現在、ウーバーはサンフランシスコ、ピッツバーグなどでAutonomousサービスの試験運用を実施中です。

Autonomousのライド・シェアが格安で使えるなら、自家用車を保有する必然性はなくなります。

大手自動車メーカーもAutonomousのカー・シェア・ビジネスへの参入を表明しています。

GMはAutonomous車による区間限定のライド・シェア・サービスを計画中。
自家用車保有のコスト効率の悪さに加えAutonomousによるカー・シェア、ライド・シェアが増えれば自動車を所有する意義は大きく薄れる。自家用車保有率の8割減が見込まれる。

Seba氏;「これらのサービスと自家用車を保有する際のコストを比較して車を持たない人の数は爆発的に増えるでしょう。Autonomousによるカー・シェア、ライド・シェアの台頭で自家用車保有率の8割が消滅すると思われます。そして2030年には全ての車はEVかつAutonomousに取って代わられるでしょう」

「当然駐車場は不要になり、特に地価の高い都市部における都市計画の再構築のチャンスが訪れます」

「そうなったとき、私たちはどんな都市を望むのでしょう? 公園のようなパブリック・スペースを増やすのか。それともショッピング・モールばかりの商業施設で埋め尽くすのか?」

 

 

4、ソーラー

■ ソラー・パネルの価格低下

ソーラー・パネル(photovoltaic、またはPV)はテクノロジーです。ここでもexponentialな進化が起きており、価格は1970年との比較で1/200にまで低価格化が進んでいます。

 

1970年との比較では200分の1にまでPVの価格低下が進んでいる

 

また、PV装着率は2年で倍の増加を見せています。

PV装着は年間40%以上で増加

 

つまり、理屈の上では14年後(2016年の講演時から)には世界の全ての電力はソーラーで賄われる計算となります。

装着率が年間41%の増加のまま進めば2030年には世界の全ての電力はソーラーとなる。

でも本当にそんな世の中が到来するのでしょうか?

下のグラフは伝統的なエネルギーの価格推移を表したものです。

石油、天然ガス、石炭、原子力、全てのエネルギー価格は高くなっている。

1970年以来、全てのエネルギー価格は右肩上がりを示しています。

 

従来型のエネルギーとの価格比較を見てみます。

ソーラー発電と他の伝統的エネルギーの価格比較。圧倒的にソーラーが安い。

ソーラー発電と比較すると石油は2,110倍ですが、これは1バーレル$30での計算です(2017年11月現在WTIは約$57)。

「忘れてはならないのはソーラー・パネルはテクノロジーであってエネルギーではありません。exponential的な勢いで低価格化が進むということです」

これに加え、米国ではソーラー・パネルのリース業が盛んになってきており、顧客はお金を払うことなく自宅の屋根にパネルを設置できます。新たなビジネス・モデルの台頭です

 

 

■ Grid Parity

ドイツ銀行の試算では2017年時点では、すでに世界の8割の場所でソーラー発電の価格が、伝統的な電力会社の発電所から送電される電気より安くなることを示しています。

ドイツ銀行のレポートでは2017年には世界の8割がGrid Parity(ソーラーと電力会社提供の電気料金の分岐点)に到達する。

しかしSeba氏は「Grid Parity」は通過点に過ぎないと考えます。

「世界のどの地域であろうと、屋根の上のソーラー・パネルが発電する電気が電力会社の送電費より安くなった時が分岐点です」

従来型の発電所(Centralized Generation)は、大掛かりな設備の維持に加え、送電のコストから逃れられません。発電所で作り出された電気は送電の際に30%も失われます。

「この分岐点に達した瞬間、従来の発電所を運営する電力会社は、例えコスト0で発電しても市場競争力を失います」

「思い返してください、あらゆるテクノロジーは分岐点を迎えた瞬間、Sカーブを描いた急激な増加が起きるのです」

「私はこの分岐点を<God Parity>と呼んでいます」

 

 

Seba氏:「God Parityの到来は2020年と予想してます。Clean Disruptionは、今まさに起きつつあるのです」

 

 

 

 

以上

前編を見る

***

 

 

The outcome of the Clean Disruption is that by 2030

• All new vehicles will be electric.

• All new vehicles will be autonomous (self-driving).

• The Internal Combustion Engine will be obsolete

• The Oil industry will collapse • Coal, natural gas and nuclear will be obsolete

• 80+ per cent of parking spaces will be obsolete. • Individual car ownership will be obsolete.

• 95% of miles will be on-demand autonomous and electric (AEV), a new model called Transport-As-A-Service (TaaS)

• All new energy will be provided by solar (and wind) Clean Disruption is a technology disruption. Just like digital cameras disrupted film and the web disrupted publishing, Clean Disruption is inevitable and it will be swift.

 

今回は異例に長い紹介になってしまったことをお詫びいたします。Tony Seba氏の講演「Clean Disruption」は、その内容を正確にお伝えする価値があるものと考え、ほぼ全編を紹介させていただきました。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

XX

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「クリーン革命」 The Clean Disruption – Tony Seba ①前編

 

「Clean Disruption、それはテクノロジーによる革命だ」Tony Seba氏

クリーン革命。それは避けられないし、すでに始まっている。

Tony Seba (スタンフォード大講師)

 

今回取り上げたのはスタンフォード大の講師であるTony Seba氏の講演「Clean Disruption」(2006年にスウェーデンのオスロで開催されたSwede Bank主催のNordic Energy Summitの動画より)。

Seba氏の著書「Clean Disruption of Energy and Transportation」(2014年)に沿った内容ですが、数多くの講演をこなしている方だけあって、大事な事実が非常にわかりやすく解説されています。YouTubeではいくつかの講演の視聴が可能です。現在起きつつあるエネルギーと交通の大変革を解説したものとして非常に優れたものだと思います。詳細をお伝えできるように前編と後編の2回に分けての紹介としました。

注):「Clean Disruption」を正確に訳すれば「クリーン破壊=(リニューアブル・エネルギーによる既存システムの変革)」でしょうか。 

 

■ Disruptionとは?

まずは講演の冒頭部で示された以下の写真をご覧ください。

1900年当時のニューヨーク5番街を行き来する馬車の群れ。自動車が一台走っているのを見つける事ができますか?

1900年のイースターの朝に撮られたNYC 5番街の写真ですが、大通りを行く馬車の列の中に自動車が1台走ってます。見つける事ができますか?

赤く囲まれた部分に車が1台走っていました。

 

13年後、同じ場所を撮った写真が示されます。今度は自動車の波の中に馬車が1台走っています。

1913年のNYC 5番街。車の波の中に1台の馬車。

 

Seba氏:「これがDisruptionです。Disruption自体は目新しい概念ではありません。馬は何千年もの間、我々の交通手段として使われてきました。しかし、たった13年程で都市における交通手段は自動車に取って代わられてしまったのです」

 

Seba氏は「Disruption」を以下のように定義しています。

「新たな製品・サービスによって新規にマーケットが創出される。そして、既存の製品・マーケット・産業の著しい弱体化・変容・破壊をもたらす

 

Seba氏: 「このように今までのDisruptionは、より安くて優れた商品やサービスが登場することによって引き起こされるのがパターンとなっていました」

「ところが、近年のDisruptionには従来とは異なる法則が働いているようなのです」

 

 

■ なぜ専門家は将来予測を誤るのか?

 

話は1980年代に移ります。

「1985年、当時最大のテレコミュニケーション企業であったAT&Tは、自社が開発した携帯電話の将来性に関する予測をマッキンゼー&カンパニーに依頼しました」

AT&Tの開発した携帯電話市場の将来性予測と実際の差は120倍!

「マッキンゼー&カンパニーが報告した予測は、2000年には90万人の契約者が見込まれる、というものでした」

「ところが、実際の1900年度の携帯電話契約数は1億900万人でした。マッキンゼーの予測した数字との誤差は実に120倍でした

「投資を誤ったAT&Tは自社の保有していた陸上電話網からの収益を失うだけでなく、新たに創出された2.4兆ドル市場への参入機会すら逃してしまったのです。現在IT関連のトップ15社にAT&Tの名前を見つけることはできません」

左グラフ:携帯電話契約者数の予測(黒線)と実際(赤色曲線)  右表:テレコミュニケーション関連企業の市場価格順位

この他にもKodak, Nokiaなど、市場を制覇していたような企業が姿を消している例はいくらでも見つかります。

なぜ専門家は将来予測を見誤ってしまうのか?

彼らは往々にして「そんなことは起き得ない」とか「まだ何十年も先の話だ」と、目新しいものを前にした際、往々にして誤った予測を立ててしまうのはどうしてでしょう?

Seba氏は理由を次のように解説しています;

 

「人々は、従来から親しんできたLinear(直線的)な進化は想像できても、近代テクノロジーのExponential(指数関数的)な進化と、それらのConvergence(収束)による変革をイメージする事が苦手なのです」

 

「ムーアの法則に代表されるように、コンピューター・テクノロジーは年間42%、2年で約2倍という指数関数的なカーブを描いて進歩しています。これは10年で1,000倍、20年で1,000,000倍、30年だと1,000,000,000倍です」

ムーアの法則。ICのトランジスターの数は2年で2倍に。

 

コンピュータの分野のみでなく、他に幾つものテクノロジー領域で同じようなExponetialな進歩を見出せます。

 

exponentialな進歩が顕著なテクノロジー領域

 

「Exponentialなスピードで進歩する複数領域のテクノロジー同士のconvergenceにより、人類が今までに経験しなかったようなスピードと規模の変化がもたらされるのです。シリコンバレーが多く領域でDisruptionを引き起こす理由がここにあるのです」

 

「iPhoneとアンドロイドが同じ年に発売になったのは、テクノロジーのconversionによりスマートフォンの市販が可能となったのがまさにその時期だったからです」

 

Seba氏が示す2016年時点でexponentialな進歩が顕著なテクノロジー領域は以下。

exponential な進歩が顕著なテクノロジー領域(2016年度)

 

■「Clean Disruption」

Seba氏: 「それでは、ここからはエネルギーと交通の分野にフォーカスして話を進めていきます」

4つの領域でのexponential 進歩とconvergenceが「Clean Disruption」を引き起こす。

以下の4つの領域のconvergenceが「Clean Disruption」を引き起こすます。

  1. エネルギーのストーレージ(リチュウムイオン・バッテリー)
  2. EV
  3. 自動運転車
  4. ソーラー

 

後編では、それぞれの領域で何が起きているのか、それらのconvergenceが引き起こす「Clean Disruption」とはどんなものなのか、詳細に見ていきたいと思います。

 

XX

後編を見る

 

 

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Space X – 1度の打ち上げで10基の衛星を軌道に配置

Space X が打ち上げた衛星は一度に10基!

 

日本時間で2017年10月10日の午前、国産ロケットH2Aが衛星打ち上げに成功しましたが(おめでとうございます!)、現地時間でその前日の9日、カリフォルニアのバンデンバーグ基地から民間企業であるSpace Xはイリジュウム3の打ち上げに成功しており、一番コストのかかる1段目のブースター・ロケット部分は打ち上げから7分少々後に無事に帰還しています。

イリジュウムは今回1回の打ち上げで10個(!)の衛星を計画された軌道に配置したようです。

10基の衛星を積み込んだ2段目ロケットは軌道を回りながら100秒ごとに1基の衛星を放出し、そこから衛星は若干の高度を上げて周回軌道につきます。10基すべての衛星を配置する作業は15分で完了します。

今回で3回目、2018年中頃までにあと数回の打ち上げてを行い、バックアップも含め全部で81基の衛星を軌道に乗せる予定。そのうち75基がSpace Xによって打ち上げられるそうです。

IRIDIUM社 Matt Desch氏によるイリジュウム・システム解説部分(14’00″より)

 

今回の成功でトータル30基が軌道に配置さた事になり、81基の配置が全て完了すれば地球上どこでも常時GPS、電話、その他コミュニケーションが可能となるそうです。

特筆すべきは、この衛星システムは常時、地球表面上のあらゆる部分をカバーするので、どこでもコミュニケーションが可能となる事。

例えば、極寒の吹雪の中、わざわざテントを出て小高い丘に上がって衛星を捉えるような行為は一切不要になる、と動画でも解説しています。

打ち上げの瞬間

 

プレスキット;
http://www.spacex.com/sit…/spacex/files/iridium3presskit.pdf

打上げの動画とイリジュウムのPR動画;
http://www.spacex.com/webcast

***

以下、私感ですが;
1段目のブースターロケット部の回収技術を持たない日本のロケットではコスト面で商業衛星打上げビジネス市場で戦うのは厳しいのでは?

これらの比較はおろか、日本のマスメディアはSpace XもTeslaSolar CityBoring Co.も何も詳細を伝えていないように思います。

でも、現代の「モノづくり」というのはこういうものを指すのではないでしょうか?

彼らは盛んに「モノづくり」という言葉を一種のバズワードのように使いますが、どうもそこでイメージされている世界観には、下町の鉄工所で年季の入ったガンコ職人が旋盤回して手先の器用さと体に染み込んだ感覚や技術を発揮して神業のような仕事ぶりを実現して欧米人の鼻を明かす、なんて想いが限りなく漂っているように思えてしまうのが残念です。

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Teslas Everywhere / テスラが溢れる街、ノルウェー・オスロ ー EV最先端都市事情

 EV先進国ノルウェイ紹介
Vox

テスラが溢れるEV先進都市 − ノルウェー・オスロのEV事情の紹介。

 

アメリカのブログサイト「VOX」が2017年6月にアップしたノルウェー・オスロにおけるEV事情の紹介動画の解説です。

アメリカからやってきたVOXレポーターのJohnny Harris氏がオスロの街を散策しながら、何故ノルウェーでテスラが大人気なのか?その理由を探ります。

***

 

先日、Nissanが新たなEV車を発表し、そのCMで謳われている「自動運転」の呼称に問題があるとか無いとか、なんて話題がネットを賑わせているようですが、EV車の普及を社会インフラや政策と一環のものとして捉えた場合、ノルウェーの事例は大いに参考になると思い、今回はこの動画を取り上げました。

以下概要:

「僕の人生でテスラを目にしたのは今まで(アメリカ国内では)たった5台きり。そのうちの3台はショールームの中に展示してあるやつだった。それなのにここ(オスロ)を歩き回った2時間ですでに50台ほど目にした。驚いたよ!」

以下、ハリス氏が歩きながら述べるノルウェーにおけるテスラの販売データ;

  • 2014年には月間売上台数でNo.1。これはEVのみでなく車全カテゴリー中の1位。
  • 販売台数の割合は2016年の数字ではテスラが29%ものシェアを獲得している。3月単月では37%とシェアを上げている。
  • 翻ってアメリカでのテスラ車の割合は1%にも満たない*。

(ここで彼は持参のドローンを飛ばしてオスロの街の空撮映像を紹介)

「ノルウェイはダム等による水力発電で99%の電力を賄っている。よって発電コストも安価なんだよ」

「テスラのみならずEVが街に溢れている。ナンバープレートの冒頭に’E’の文字があるのがEVだ」

ノルウェーではEVはナンバープレートの冒頭文字が ’E’ となっているので簡単に識別できる

 

「一番肝心なのは政策。EV推進のためのインセンティブ付与を国策として進めていることだ」

EV推進のためのインセンティブは以下;

  • 公営駐車場におけるEVの駐車料金はタダ
  • 公営の充電施設での充電料金タダ
  • HOVレーン(High Occupancy Vehicle=乗員が2名以上の車両のみが走れる優先レーン)を乗員1名のときでも走行可能
  • 車両登録料タダ
  • 所得税の優遇制度
  • 消費税(Sales Tax)全額免除

 

(余談:動画でこの辺りで紹介されるグラフィティの「Even Thugs Cry(悪党だって泣く時がある)」はラップMCの故2pacwhen Thugs Cry 」からの引用と思われます。曲の歌詞は非情な世に対する怒りがテーマとなってるようです)

ここでハリス氏はEV車に充電する街の人にインタビューを行います(動画は4’05″近辺)。

EV優遇政策
「オスロの街中に設置されている2,000箇所のチャージ・ステーショは全て無料なんだ」

ハリス氏;「ここが、今回僕が見つけた一番のお気に入りの場所、EV車用チャージ・ステーションだ。オスロ市中に2,000箇所も設置されているんだよ。利用中の街の人にちょっと話を聞いてみようか」

街の人:「オスロの街中に設置してあるEV車用のチャージ・ステーションは全て無料なんですよ。その上、有料道路の通行料もタダになるんです」

***

 

なんだか素晴らしい制度ですね。これだけの社会インフラの資金はどこから捻出されているのでしょう?

それは「Sovereign Wealth Fund (国富ファンド – 以下SWF)」と呼ばれる政府系ファンドの存在です。

ノルウェーのSWFは2017年現在で約1兆ドルと世界最大です。このファンドがインフラやインセンティブ政策を可能にしている訳です。

ファンドの資金はノルウェーが石油や天然ガスを売って儲けたお金。実は北海油田を持つノルウェーは世界第14位(2016年度統計)の産油国なんですね。また、近年は天然ガスの比率が増えているようです。(下の産出量推移グラフの緑色が石油、赤色がガス)

出典:Norwegian Petroleum Oil and Gas Production

 

 

動画の総括部でハリス氏は、「グリーン化の資金の出所が石油やガスなどCo2を排出する<オイル・マネー>に頼っているのは矛盾してない?」との疑問を投げかけます。

「ノルウェーがやっているのは、自国で化石燃料を燃していないだけで、結局は石油やガスは売られた先で燃やされる。自国のグリーン化推進が、実は他国への化石燃料の輸出で進められているんだ。この矛盾を彼らはどう捉えているのか、ノルウェイの友人に訊いて見ようか」

グリーン化は化石燃料を売った金で進められている。そこに議論の余地はある事はノルウェイ人も意識している。

友人談:「そうだねぇ、中国やインドなどの発展途上国では石油やガスはまだまだ必要とされているしねぇ。なるべくグリーン化に沿った採掘とかって感じかなぁ。化石燃料を売ってグリーン化を進めていることに議論の余地があるのは僕らも認識しているよ。でも何もやらないよりマシだろう?」

 

ハリス氏は最後に、「夢のように思えたグリーン化、グリーン・インフラ、グリーン社会の紹介だったけど、それは<オイル・マネー>によるもの。結局は世界全体を化石燃料から脱却させる解答ではない事が判ったと思う。それが今回の結論」と動画を締めくくります。

 

***

再度余談ですが、以前テスラの創立者であるイーロン・マスク氏が何かのインビューの中で、一番多くのテスラを買ってくれている個人はノルウェーの人なんだ。彼は眼科医なんだけど、一人で7台ものテスラを保有している。EVを広める目的で、誰もが乗りたい時に乗れるように試乗の機会を開放しているんだよ」と言っているのを思い出しました。この話、ノルウェーという国の民度の高さがうかがい知れるように思いました。

レポーターのハリス氏が動画で指摘している「化石燃料がグリーン化への資金になっているのは矛盾」という指摘は理解できますが、僕から見れば潤沢な資金が国民全体の富の総量を増やす目的に使われている事実は羨ましい限りです。

日本は世界有数の債権国なのに、稼いだお金はどこに行ってしまうのでしょうか?

 

 

*アメリカ国内でもイーロン・マスク氏の進める、一般には奇想天外に思えた各種ビジネスは当初既存勢力からかなり叩かれていました。テスラに関しては現在も州によって販売ができない法的枠組みで販売を拒まれているようです。

*ノルウェイは世界第14位の産油国  出典:Global Note ;   https://www.globalnote.jp/post-3200.html

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プーチン大統領:「AIを制するものが世界を制覇する」

AIを制するものが世界を制覇する。AIがもたらす未来には無限の可能性と予測不能の脅威が潜んでいる。

V.プーチン

 

9月1日、新学期を迎えたロシアの学生たちに向けた公開授業が衛星中継を介して放映されました。

壇上に登場したプーチン大統領は学生たちに向けて「AIが未来を切り開く」と発言

「AIが未来を切り開く。一番最初にマスターした者が世界を牛耳ることになるでしょう」

「AIが切り開く未来はロシアのみならず、全人類がその恩恵に授かるべきです。途方ない可能性とともに、そこには予測不能な脅威が潜んでいます。この分野のリーダーとなる者が世界を制覇するでしょう」

さらにプーチン大統領は「この力(AI)が何者かに独占されてしまうのは望ましくありません。もしロシアがリーダーとなれば、私たちはノウハウを全世界と分かち合うつもりです」

45分間のセッションの中で(学校の授業の一環として放映された)、プーチン大統領は宇宙、医学、人間の脳の可能性に関するディスカッションを行い、特に認知科学の重要性を指摘したそうです。

「眼球の動によってコンピューターを操作する事が可能となるかもしれない。さらには、宇宙空間も含め、極限状況下における人間の行動分析なども可能です。これらの領域における研究は無限の可能性を秘めています」

この日のオープン・クラス放送には16,000の学校から生徒や教師が参加し、トータルの視聴者は100万人を超えたそうです。

AI分野でのイニシアチブを睨みながら、自国の学生たちを鼓舞して優秀な研究者の育成に注力しているのが伺えるようですね。

https://youtu.be/fnJinlR-XTc

 

この放送の後、Elon Musk氏はTwitterで以下のようつぶやいています。

以下、イーロン・マスク氏のつぶやき意訳:

「やはり始まったね」

「中国、ロシア、さらには、優秀なコンピューター・サイエンスを有するすべての国々がこの競争に近く参入してくる。AIの優位性を巡っての国家レベルでの競争が第三次世界大戦の引き金となる可能性が非常に高い。僕はそう見ている」

 

上のツイートへの回答としてマスク氏は、「国家のリーダーの意思によって戦争が起きるとは限らない。どこかのAIの判断で<先制攻撃が勝利への最良の手段>という解が選択される可能性もあり得る」とツィートしています。

彼は以前にも「AIによる自動化された兵器は、戦争における第3の革命だ。最初は火薬、次に核兵器、そしてAIにコントロールされた自動兵器と指摘していました。

 

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テスラ モデル3 納車式典の様子 (Tesla Model 3 Handovers)

イーロン・マスクが創造する企業ユーフォーリア

 

2017年7月28日(金)、カリフォルニア フリーモントにあるテスラ自動車の工場敷地で行われたTESLA MODEL 3 納車式の動画が興味深かったのでアップしました。

最初の50台のうち20台が試験車両として除かれ、残りの30台が初納車。新規オーナーはテスラで働く従業員が基本とのこと。

式典で壇上に立つイーロン・マスクはまるでロック・スターのようです。

聴衆の喜びに溢れた騒ぎぶりは、かつてマック・ワールドでS.ジョッブスと信者たちが共有したユーフォリアに近いものを感じます。

「一番のチャレンジは、現在抱えている多数の予約オーダーに応えるべく、新型のモデル3を迅速に大量に製造する事。これからが大変だよ。地獄へようこそ!(笑)。でもみんなはもうそれのベテランだよね、いいかい、地獄(過酷な状況?)を通り抜けなきゃいけない時の方法はひとつ。ただ突き進むのみ、だよ」

と壇上のEMが笑いながら言うと、なんと従業員たちは歓喜の声を挙げます。かつてS.ジョッブス時代のアップルを感じる部分。
(全ての企業経営者が夢見るであろう熱烈な企業ファシズムが浸透しているかのよう)。

翌 29日付け(現地時間)ニューヨーク・タイムズ紙でもこれを報道してますが、「多大なプレ・オーダーに応えることができるのか?それがテスラに課された課題」と批判的なトーン。

https://www.nytimes.com/…/bus…/tesla-model-3-elon-musk.html…

式典で壇上に立つEMはそれらの問題へのソリューションとして;

1、今年の暮れまでにモデル3を5,000台/week生産体制に持っていく。

 

2、ネヴァダに設立した世界最大のリチュウム電池工場のギガ・ファクトリー
(この工場ひとつで、その他の全世界のリチュウム電池生産量を凌駕。ギガ・ファクトリーを紹介したwired誌の紹介記事

 

3、「Super Charger」(急速充電スタンド)の設置数を2018年度中に現在の3倍に増設。世界で乗り回せる車となる。

「Super Chargerは単に急速充電スタンド。充電時間を気にしなければ今だって電源があれば世界のどこでも乗り回せるんだ(EM)」

 

また、リスクとして彼が言及したのは;「モデル3では1万にも及ぶ専用部品が用いられている。部品の供給元は2/3が北米、残りの1/3がその他海外から。供給される部品の中で一番納期の遅れるものに生産のスピードが制限されてしまう。現在はこの部分の改善に最大限の努力を集約している」と。

EMの説明によると、
「モデル3には8台のカメラ、12台の超音波ソナー、4台のレーダー、10テラバイトを超える性能のコンピューターが搭載されている。ハードウェア面は来たるべく全自動運転時代に完全に対応している。現時点で生産されている他のテスラ車種も同様。これは意外と知られていない事実なんだよ」と言ってます。

最後にEMは、「同価格帯クラスで、他のどの車種もこれ以上の性能と安全性を有する車はない」と自信たっぷりに言います。

***

 

テスラ・モデル3の現地価格とスペック

グレードは2タイプ。 スタンダードが35,000ドル、ロング・レンジは44,000ドル。

 

以下、2タイプの性能比較;

Standard: 1回の充電での航続距離 220mile≒354km、0-60マイル加速 5.6秒、最高時速 130mph≒時速210キロ。

Long Range: (同上順)310mile≒500km、5.1秒、140mph≒時速225キロ

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イーロン・マスク「AIの進歩は大量失業時代の到来。ベーシック・インカムの導入が必要となる」

「AIの進歩は大量失業時代の到来を意味する。ある種のユニバーサル・ベーシック・インカム制度の導入が不可避となるだろう。

「でも、産業経済活動から不要とされた人々が大量に発生する時代に、人は生きる意味をどこに見出せば良いのか?」
         
           ↓

「脳とコンピューターの融合に解決のヒントがある」−EM

 

 

***

 

3回連続でEMのインタビューですが、大変興味深いのでまたひとつ。

2017年の2月にドバイで開催された湾岸諸国の首長や政府関係者向けと思われるWorld Government Summitというカンフェレンスでの発言から。

モデレーターが、「この場にいる各国政府関係者へ、未来に向けたアドバイスを3つ挙げてください」という問への答え。

最初の2つに関しては、すでに広く認識されている事実を復唱しているようにEMは話します;

1、AI開発の管理。人々に危害を与えないように政府が監視すること。

2、20~30年で自動運転が大勢を占める世の中になる。現在の3倍の電気が必要となる。それだけの電気が供給できる体制の準備。

と、ここまでは一般的に理解されている部分。しかし、

3、来たるべく大量失業にどう対応するのか? 答えはユニバーサル・ベーシック・インカム制度の導入。他に選択肢はないと思う。

人間にできて機械やロボットにできない仕事はほとんど無くなる。僕はそれを望んでいる訳ではない。ただ、そういう世界の到来が多分避けられない、と考えている。

AIによる生産物は大変優れたクオリティーのものがふんだんに供給されるようになる。値段も飛躍的に下がる(AI/ロボットに課税し、それをユニバーサル・ベーシック・インカムの財源にする。それでも企業は十分な利益を得られる、としています)。

しかし一番難しいのは、その状況で人々は生きる意味をどこに見出すのか?という部分です。多くの場合、人は職業に自身の生きる意味を見出している。この部分への対応を考えなくてはいけない。私たちが直面する大変難しい問題となるでしょう。

我々が望むような、希望の持てる世界を創って行くにはどうすれば良いのか?

 

***

 

ここでEMは話題を「脳とコンピューターの融合」へ振ります。

1、ちょっとSFみたいな話になるけど、人はすでに第三レイヤーの脳を獲得している。それは一種のデジタル・サイボーグともいえる。
大脳辺縁系(感情や動物的本能を司る部分)、大脳皮質(思考や計画)、そして第3階層としてデジタル・レイヤーの存在。

彼が例として揚げたのが; 「グーグルで瞬時に何かを調べたり、地球の裏側の人と話をしたり、死んだあともSNSやEメールは残り、あなたの痕跡(ghost)は生き続ける」

2、我々はコンピューターをキーボード、またはタッチ・パッドでコントロールしているが、現状のスピードは非常に遅いもの。普通で10bit/sec、大目にみても100bit/secが限界だろう。

でもコンピューターは兆bit/sec単位でコミュニケートする。

生体(脳)とコンピューターとのインターフェースの伝達帯域幅が飛躍的にアップすることで、コンピュータと人間の共生や、コントロールの問題、無用性の問題、それらへの解決の糸口が見つかると思います。

(ちょっと「お気軽」な感じのモデレーター氏、言葉を失って、、、「あーむ」と唸り声)

EM: 多分に深遠な内容で恐縮ですけど、、、。

 

***

 

最後の部分をどう捉えれば良いのか、、、、。

本来ならこのお気楽モデレーター氏は「コントロールとはどういう意味ですか?」と訊くべきだと思うのですが、意図してなのか単に興味が無いのか話の方向を変えてしまいました。残念。

コントロールと無用性への解決策、という言葉から想像されるのは、キャメロン・クロウの映画「Vanilla Sky」 のような人工冬眠カプセルで眠らせて、希望通りの人生を生きている夢を見させる会社の話。

そうなると、近未来では失業者はカプセル行き?
大量の人々がカプセルの中で眠りながら、夢の世界で生きる時代の到来。

もし、EMがこの場でほのめかした解決策へのヒントがこんな方面を向いていたのだとしたら、、、ちょっと怖いですね。

(すでにイーロン・マスク氏は2016年に設立されたNeuralinkの創立メンバーのひとりとして名を連ねており、この会社は脳とコンピューターとの融合を研究しているそうです)

 

(抜粋部分は動画の22m35s辺りから)

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AIは人類が直面する最大のリスク – 2 (イーロン・マスク)

「ひとたびAI開発の現状が認識されれば、人々は大変な恐怖を感じるだろう。それほど深刻な状況なのです(EM)」

***

先の投稿に続いて、同じNGA会議(全米州知事連合?)の最終日のElon Muskの「AIの脅威」に関する応答から、興味深い部分をもうひとつ抜粋しました。

 

***

 

アリゾナ州知事の質問:「まだ何ものと判断もつかない分野(AI)で、我々(政治家)はどのようにして規制基準を設けていけば良いのか?」

以下、EMの応答:

1、まず現状認識だ。現在のあなた方はそれすらできていない。

2、チェック機関の設立。目的はAI開発の現状を認識し評価すること。

3、そして規制の導入、簡単な事です。

 

そして彼は以下を付け加えます。

4、当然、AI企業は反対するだろう。僕の会社は反対しないけどね。彼らは、そんな事をしたら進歩が止まるだの、中国へ逃げ出すだの、タワゴトを言いだすだろう。でも実際には彼らはそんな事をしません。ボーイングが米国から出ていったか?出てないですね、アメリカ国内にとどまってます。自動車産業だって同様。
規制をかけると規制のゆるい国外へ逃げる、なんていうのは非常に高慢な態度だと思います。

 

最後にEMが言ったのは:

5、目的は政府レベルでの注意喚起(awareness)です。ひとたび「awareness」が向けられれば、人々は大変な恐怖を覚えるはず。

それ程、深刻な状況なのです。

 

以上
(抜粋画面は動画の1h20m44s辺りから)

 

***

 

以下、完全な私感で大変恐縮なのですが、メディアやビジネス・ニュース等で取り上げられる「AI」は、それいけ乗り遅れちゃいけないビジネスチャンス的に、一種のバズワードとなっています。

でも、この分野の最先端に身を置くEM氏の頭はすでに何光年も先を見据えているかのようです。

イーロン・マスク氏も共同設立者として昨年(2016年)立ち上げられたNeuralink(2016設立)は脳とコンピューターの融合を研究する会社。

どうせこの分野で悪が台頭するのなら、自分たちが先頭を走ることにより、台頭してくる悪を抑え込もうとしているのかもしれません。

 

以上
(抜粋画面は動画の1h20m44s辺りから)

 

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AIは人類にとって現在最大のリスクだ。 イーロン・マスク

AIは人間のやれることは全てできるようになっている。それも人間の能力をはるかに超えるレベルでね。もし、そんな力が自由に使えるとしたら、あなたは何を考えますか? イーロン・マスク

 

***

 

先週(2017年7月13日〜16日)ネヴァダ州で行われたNGA(党派を超えて全米の州知事が集うコンフェレンス)での最終日、テスラスペースXの設立者でもあるイーロン・マスク氏が登場し、その動画がアップされています。

講演の後半では各州知事たちとの質疑応答の時間が設けられ、コロラド州知事から、「AIは現在人類が直面する最大のリスクとあなたは言っているが、それに対して我々は何をすべきか?」と問われた際のイーロン・マスク氏の応えを以下に要約しました;

イーロン・マスク

・まずは現状把握から始めなくてはいけない。大半の政治家はそれを怠っています。

・政府の役割のひとつは、一般の人々の幸福の実現にあると信じている。だから規制が必要なのです。

・昨年、Googleの子会社が開発したAI(Alpha Go)が囲碁の世界チャンピオンを打ち負かしました。囲碁は非常に難易度の高いゲームで、コンピューターが人間を負かすのはまだ20年先と言われていました。今なら世界のトップ50人を同時に打ち負かす事だって可能です。

・すでにロボットは完成の瞬間から二足歩行を可能としています。なんの訓練もなしにね。

・このように、現在のAIの進歩のスピードは脅威的なのです。

・だが、1番の脅威はネットワーク内で活動する「DEEP INTELLIGENCE」です。

 

以下、彼が例として挙げたげた話の概要;

1、仮に投資目的でAIを使ったとする。目的は保有株(もしくはポジション)の価値の最大化。

2、ひとつの方法として戦争を起こす、というやり方がある。

3、手持ちの防衛関連株をロング・ポジション(将来の値上がりを期待)、民需株をショート・ポジション(値下がりを期待)にしておく。

4、そこで戦争を起こす。
Fake Newsを流し、メールアカウントを乗っ取り、Fake プレス・リリースを流すなどの情報操作を行えば戦争は起こせる。

***

ここで彼は「おっと、どうやら墓穴を掘っちゃったね。僕はあくまでも仮定の話をしているだけだよ」と言いながら、引き続き以下の例を挙げました。

2度目のマレーシア航空撃墜事件を覚えてますか?ウクライナとロシア国境地帯で起きた事件です。あれによってロシアとEUの関係は極度に緊張しました。
もし、上記のような投資目的でAIが使われたとしたら、、、」

1、まずはマレーシア航空の飛行ルート・サーバーにハックし、飛行ルートを紛争地域上空に変更する。

2、偽情報で(「anonymous tip」と言ってます)旅客機の真上に敵航空機が飛んでいる信号を送りつける。

そうすれば、後はご存知のような結果となる、と身振りで、、。

(会場はし〜んと静寂。その後、苦笑の声がチラホラ)

****

 

EM、一般には認識されていないリスクの実態を肌で感じているのでしょう。

抜粋の部分は動画の1h16m28s辺りからです。

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