Teslas Everywhere / テスラが溢れる街、ノルウェー・オスロ ー EV最先端都市事情

 EV先進国ノルウェイ紹介
Vox

テスラが溢れるEV先進都市 − ノルウェー・オスロのEV事情の紹介。

 

アメリカのブログサイト「VOX」が2017年6月にアップしたノルウェー・オスロにおけるEV事情の紹介動画の解説です。

アメリカからやってきたVOXレポーターのJohnny Harris氏がオスロの街を散策しながら、何故ノルウェーでテスラが大人気なのか?その理由を探ります。

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先日、Nissanが新たなEV車を発表し、そのCMで謳われている「自動運転」の呼称に問題があるとか無いとか、なんて話題がネットを賑わせているようですが、EV車の普及を社会インフラや政策と一環のものとして捉えた場合、ノルウェーの事例は大いに参考になると思い、今回はこの動画を取り上げました。

以下概要:

「僕の人生でテスラを目にしたのは今まで(アメリカ国内では)たった5台きり。そのうちの3台はショールームの中に展示してあるやつだった。それなのにここ(オスロ)を歩き回った2時間ですでに50台ほど目にした。驚いたよ!」

以下、ハリス氏が歩きながら述べるノルウェーにおけるテスラの販売データ;

  • 2014年には月間売上台数でNo.1。これはEVのみでなく車全カテゴリー中の1位。
  • 販売台数の割合は2016年の数字ではテスラが29%ものシェアを獲得している。3月単月では37%とシェアを上げている。
  • 翻ってアメリカでのテスラ車の割合は1%にも満たない*。

(ここで彼は持参のドローンを飛ばしてオスロの街の空撮映像を紹介)

「ノルウェイはダム等による水力発電で99%の電力を賄っている。よって発電コストも安価なんだよ」

「テスラのみならずEVが街に溢れている。ナンバープレートの冒頭に’E’の文字があるのがEVだ」

ノルウェーではEVはナンバープレートの冒頭文字が ’E’ となっているので簡単に識別できる

 

「一番肝心なのは政策。EV推進のためのインセンティブ付与を国策として進めていることだ」

EV推進のためのインセンティブは以下;

  • 公営駐車場におけるEVの駐車料金はタダ
  • 公営の充電施設での充電料金タダ
  • HOVレーン(High Occupancy Vehicle=乗員が2名以上の車両のみが走れる優先レーン)を乗員1名のときでも走行可能
  • 車両登録料タダ
  • 所得税の優遇制度
  • 消費税(Sales Tax)全額免除

 

(余談:動画でこの辺りで紹介されるグラフィティの「Even Thugs Cry(悪党だって泣く時がある)」はラップMCの故2pacwhen Thugs Cry 」からの引用と思われます。曲の歌詞は非情な世に対する怒りがテーマとなってるようです)

ここでハリス氏はEV車に充電する街の人にインタビューを行います(動画は4’05″近辺)。

EV優遇政策
「オスロの街中に設置されている2,000箇所のチャージ・ステーショは全て無料なんだ」

ハリス氏;「ここが、今回僕が見つけた一番のお気に入りの場所、EV車用チャージ・ステーションだ。オスロ市中に2,000箇所も設置されているんだよ。利用中の街の人にちょっと話を聞いてみようか」

街の人:「オスロの街中に設置してあるEV車用のチャージ・ステーションは全て無料なんですよ。その上、有料道路の通行料もタダになるんです」

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なんだか素晴らしい制度ですね。これだけの社会インフラの資金はどこから捻出されているのでしょう?

それは「Sovereign Wealth Fund (国富ファンド – 以下SWF)」と呼ばれる政府系ファンドの存在です。

ノルウェーのSWFは2017年現在で約1兆ドルと世界最大です。このファンドがインフラやインセンティブ政策を可能にしている訳です。

ファンドの資金はノルウェーが石油や天然ガスを売って儲けたお金。実は北海油田を持つノルウェーは世界第14位(2016年度統計)の産油国なんですね。また、近年は天然ガスの比率が増えているようです。(下の産出量推移グラフの緑色が石油、赤色がガス)

出典:Norwegian Petroleum Oil and Gas Production

 

 

動画の総括部でハリス氏は、「グリーン化の資金の出所が石油やガスなどCo2を排出する<オイル・マネー>に頼っているのは矛盾してない?」との疑問を投げかけます。

「ノルウェーがやっているのは、自国で化石燃料を燃していないだけで、結局は石油やガスは売られた先で燃やされる。自国のグリーン化推進が、実は他国への化石燃料の輸出で進められているんだ。この矛盾を彼らはどう捉えているのか、ノルウェイの友人に訊いて見ようか」

グリーン化は化石燃料を売った金で進められている。そこに議論の余地はある事はノルウェイ人も意識している。

友人談:「そうだねぇ、中国やインドなどの発展途上国では石油やガスはまだまだ必要とされているしねぇ。なるべくグリーン化に沿った採掘とかって感じかなぁ。化石燃料を売ってグリーン化を進めていることに議論の余地があるのは僕らも認識しているよ。でも何もやらないよりマシだろう?」

 

ハリス氏は最後に、「夢のように思えたグリーン化、グリーン・インフラ、グリーン社会の紹介だったけど、それは<オイル・マネー>によるもの。結局は世界全体を化石燃料から脱却させる解答ではない事が判ったと思う。それが今回の結論」と動画を締めくくります。

 

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再度余談ですが、以前テスラの創立者であるイーロン・マスク氏が何かのインビューの中で、一番多くのテスラを買ってくれている個人はノルウェーの人なんだ。彼は眼科医なんだけど、一人で7台ものテスラを保有している。EVを広める目的で、誰もが乗りたい時に乗れるように試乗の機会を開放しているんだよ」と言っているのを思い出しました。この話、ノルウェーという国の民度の高さがうかがい知れるように思いました。

レポーターのハリス氏が動画で指摘している「化石燃料がグリーン化への資金になっているのは矛盾」という指摘は理解できますが、僕から見れば潤沢な資金が国民全体の富の総量を増やす目的に使われている事実は羨ましい限りです。

日本は世界有数の債権国なのに、稼いだお金はどこに行ってしまうのでしょうか?

 

 

*アメリカ国内でもイーロン・マスク氏の進める、一般には奇想天外に思えた各種ビジネスは当初既存勢力からかなり叩かれていました。テスラに関しては現在も州によって販売ができない法的枠組みで販売を拒まれているようです。

*ノルウェイは世界第14位の産油国  出典:Global Note ;   https://www.globalnote.jp/post-3200.html

プーチン大統領:「AIを制するものが世界を制覇する」

AIを制するものが世界を制覇する。AIがもたらす未来には無限の可能性と予測不能の脅威が潜んでいる。

V.プーチン

 

9月1日、新学期を迎えたロシアの学生たちに向けた公開授業が衛星中継を介して放映されました。

壇上に登場したプーチン大統領は学生たちに向けて「AIが未来を切り開く」と発言

「AIが未来を切り開く。一番最初にマスターした者が世界を牛耳ることになるでしょう」

「AIが切り開く未来はロシアのみならず、全人類がその恩恵に授かるべきです。途方ない可能性とともに、そこには予測不能な脅威が潜んでいます。この分野のリーダーとなる者が世界を制覇するでしょう」

さらにプーチン大統領は「この力(AI)が何者かに独占されてしまうのは望ましくありません。もしロシアがリーダーとなれば、私たちはノウハウを全世界と分かち合うつもりです」

45分間のセッションの中で(学校の授業の一環として放映された)、プーチン大統領は宇宙、医学、人間の脳の可能性に関するディスカッションを行い、特に認知科学の重要性を指摘したそうです。

「眼球の動によってコンピューターを操作する事が可能となるかもしれない。さらには、宇宙空間も含め、極限状況下における人間の行動分析なども可能です。これらの領域における研究は無限の可能性を秘めています」

この日のオープン・クラス放送には16,000の学校から生徒や教師が参加し、トータルの視聴者は100万人を超えたそうです。

AI分野でのイニシアチブを睨みながら、自国の学生たちを鼓舞して優秀な研究者の育成に注力しているのが伺えるようですね。

https://youtu.be/fnJinlR-XTc

 

この放送の後、Elon Musk氏はTwitterで以下のようつぶやいています。

以下、イーロン・マスク氏のつぶやき意訳:

「やはり始まったね」

「中国、ロシア、さらには、優秀なコンピューター・サイエンスを有するすべての国々がこの競争に近く参入してくる。AIの優位性を巡っての国家レベルでの競争が第三次世界大戦の引き金となる可能性が非常に高い。僕はそう見ている」

 

上のツイートへの回答としてマスク氏は、「国家のリーダーの意思によって戦争が起きるとは限らない。どこかのAIの判断で<先制攻撃が勝利への最良の手段>という解が選択される可能性もあり得る」とツィートしています。

彼は以前にも「AIによる自動化された兵器は、戦争における第3の革命だ。最初は火薬、次に核兵器、そしてAIにコントロールされた自動兵器と指摘していました。

 

Khan Academy – 第一次世界大戦にアメリカが参戦した理由 – 後編

カーン・アカデミー主宰のS. カーン氏

カーン・アカデミー動画:「世界史-20世紀-アメリカの第一次世界大戦参戦」から、アメリカが参戦した理由の考察 (後編)。

 

前編では、アメリカの参戦理由の考察をしました。

今回は、議会で参戦を訴えるウィルソン大統領の演説と、参戦に反対の意を唱えたG・ノリス上院議員の演説内容にスポットを当てます。

まずは前編で解説されたウィルソン大統領の演説内容の要約の確認から;

1、ドイツ潜水艦による無差別攻撃への非難

2、ツィンメルマン電報

3、全人類の民主主義の守り手として戦う義務がある

以上が参戦を促す理由でした。1の「潜水艦による無制限攻撃によって多数のアメリカ市民が死亡した」という事実と、特に3の「民主主義を守るため」という部分を何度も強調しています。

原文; https://www.khanacademy.org/humanities/world-history/euro-hist#american-entry-world-war-i

 

 

次に、議会でアメリカの参戦反対を唱えたジョージ・ノリス議員の演説を詳細に見てみます(意訳にて要約を書き出しましたが、ニュアンスの確認等を含め、機会があればぜひ原文もご確認ください。原文; https://www.khanacademy.org/humanities/world-history/euro-hist/american-entry-world-war-i/a/1917-speech-by-senator-george-norris-in-opposition-to-american-entry )

 

以下、ノリス議員の演説の要約;

ノリス議員は冒頭で「参戦には反対するものの、決議で参戦となれば喜んで祖国のために尽力する」と自身の決意を表明してから参戦反対の意を唱えます。

1、ウイルソン大統領が参戦の理由とされたドイツ潜水艦による無制限攻撃によるアメリカ市民の犠牲と、ドイツが設定した交戦海域(war zone)が国際法上違法であるという主張だが、最初に交戦海域の設定を宣言したのはイギリスである。

  • イギリスは1914年11月4日に交戦海域を宣言。実効を翌日の11月5日からとした。海域は北海全域であった。
  • 翻ってドイツの交戦海域の宣言は 1915年2月4日。イギリスの宣言から3ヶ月後であり、実施は15日後の2月18日からであった。
  • ドイツの設定した交戦海域はイギリス海峡周辺とブリテン諸島周辺公海にみだった。
  • 本来アメリカは、両国が国際法に違反していると抗議できるにもかかわらず、イギリスの主張する交戦海域は認め、ドイツの主張は違法であると非難をしている。実際は両者とも国際法に違反している。

 

2、アメリカの選択肢は3つ

  • イギリス、ドイツ、両国とも国際法を違反しているのを理由に、両国に宣戦布告をする。
  • 正義の解釈を歪曲し、一方を拒絶し、他方を黙認する。
  • 両国が国際法違反をしているのを非難しながらも黙認し、中立の立場を維持。アメリカ船籍の船主たちには自己責任でこの海域を航行する旨を警告。

 

3、G・ノリス議員が提案した「4つ目の選択肢」

  • まずアメリカは両国に対して禁輸処置を施行する。
  • イギリスは程なくして物資不足となり、アメリカの説得に応じて北海からの機雷撤去の勧告を受け入れるであろう。
  • ドイツ側の北海に面した港が使えるようになれば(イギリス側の機雷による封鎖が解除されるので)、アメリカからの物資を受け入れることが可能になる(当時アメリカはドイツ側とも貿易や融資を行なっていた)。そのためには潜水艦による無制限攻撃の停止を条件とすれば、ドイツはこれを承認すると推測される。

 

4、偏見と利権−国民は誤った方向に導かれている

  • 多大なる数のアメリカ国民が戦争に参加する義務があると信じているようだ。だが、この戦いの中でイギリスもドイツも同程度の非人道的な行いをしている。同情心と金銭欲が人の判断を誤らせる。
  • 我々が当初から厳格に中立性を維持できていたなら戦争参加の瀬戸際に立つことはなかったであろう。
  • イギリスの主張する交戦海域は認めながらドイツの主張は違法だと非難するのは、アメリカが中立国の立場を捨て去ることを意味する。

 

5、アメリカの中立維持を望まない層の存在

  • アメリカには自国の中立維持を望んでいない層が存在する。彼らは参戦による利益機会を狙う利己的な人々だ。
  • これらの権益層が参戦を推進している。
  • 多くの実直で愛国的な国民は欺かれ、この真実を知らない。ドイツとの戦争を開始するべきだと信じこまされたままに大統領を支持している。
  • この戦争で我々は連合軍側に莫大な融資をしている*。投資利益の最大化を狙い一般国民のセンチメントを参戦に向けて操ろうとする階層が存在しても不思議ではないはずだ。
  • 国民感情を参戦の機運に向かわせる目的で、彼らは多数の大新聞やニュース・メディアをコントロール下に置き、前例のないほどの規模でプロパガンダを展開している(a large number of the great newspapers and news agencies of the country have been controlled and enlisted in the greatest propaganda that the world has ever known to manufacture sentiment in favor of war.)
  • これはアメリカ国民を総動員して軍需物資を紛争諸国に送り届けるための決議だ。参戦となれば、武器製造業者やウォール・ストリートの投資家たちにはさらなる利益が舞い込むことになる。
  • このように、大統領は人為的に操られた国民感情をバックに議会に参戦を呼びかけている。

 

6、証券会社(ウォールストリート)の市場予測の紹介

ノリス議員はここでニューヨーク証券取引所の会員が投資家に宛てた報告書(市場動向の予測)を読み上げます。

  • 市場は参戦を好機と捉えてる。
  • 日本、及びカナダは参戦によって未曾有の好景気の波が押し寄せている。
  • 参戦と同時に株価高騰が予測される。
  • 中立維持の場合は経済は停滞するだろう。
  • その際には戦争に向けた準備や軍備増強への投資が、実際に参戦した際に期待された利益分の補完となるであろう。

 

7、何のために、そして誰のために戦う戦争なのか?

  • 月給$16でライフルを担いで塹壕に伏せ命を捧げる兵士でもなければ、戦死した夫を持つ未亡人でもない。息子の死を嘆く母親でもない。寒さや飢えに苦しむ子供たちでもない。 戦争は大多数の愛国的で一般な市民には何の繁栄ももたらさない。
  • 戦争はウォール・ストリートのギャンブラーたちに恩恵をもたらす–彼らはすでに巨万の富を手にしているのだ。そして彼らは戦争になったとしても自らが塹壕に伏せる階層ではない
  • 戦争や軍備増強は金儲けの手段となっている。人の命を犠牲にすることをウオール・ストリートは意に介さない。犠牲となる人々は、ここで得られる莫大な利益とは無縁の階層だ。
  • ウオール・ストリートの連中が徴兵されることもなければ、ましてや兵役に志願することもないだろう。
  • この決議でアメリカが参戦することになれば幾万もの国民や同胞の犠牲を強いる結果を招く。

 

*参考資料:第一次世界大戦に参戦する前のアメリカの融資額: 大戦当初、アメリカの紛争諸国への輸出量は開戦以前の3倍に膨れ上がっていた。ほどなくしてイギリス・フランス連合国の資金は払底しアメリカの融資が始まった。1917年度のアメリカの対イギリス・フランス貸付額は 約22.5億ドル。対ドイツ融資は2,700万ドル。対イギリス・フランス融資額と対ドイツ融資額の比率は83:1。出典:http://www.digitalhistory.uh.edu/disp_textbook.cfm?smtID=2&psid=3476

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カーン・アカデミー主宰で動画のナレーターでもあるS・カーン氏はここで視聴者に向かって「ウィルソン大統領と、反対を唱えたノリス議員の演説原稿の全文をサイトに掲載してあります。是非、是非、是非(「I highly, highly, highly recommend~」と3回も繰り返し)とも読み比べることを勧めます。そして自分自身で判断してください」と強く訴えています。

 

以下は私見ですが、ウィルソン大統領の唱える「自由を守る」「民衆主義を守る」「世界の人民のために戦う」という勇ましいスローガンと、ノリス議員の「戦争で権益を享受する階層が戦争を推進している」という訴えを見比べると、すでに第一次世界大戦から100年ほどの年月を経てはいますが、今の世界の状況との類似点を見出せるように思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

Khan Academy – 第一次世界大戦にアメリカが参戦した理由 ー 前編

奥の男性がカーン・アカデミー主宰のS. カーン氏

カーン・アカデミー動画:「世界史-20世紀-アメリカの第一次世界大戦参戦」から、アメリカが参戦した理由の考察 (前編)。

 

引き続き、カーン・アカデミーの教育動画の紹介です。

今回は「世界史・20世紀・アメリカの第一次世界大戦参戦(United States enters World War I / The 20th century / World History /)」を取り上げます。

非常に濃い内容なので前編と後編の2つに分けての紹介です。

1914年に始まった第一次世界大戦当時、アメリカはイギリス・フランスの連合国側へ多大な援助はしていたものの、ヨーロッパにおける戦争に直接参加することからは距離を置き中立の立場をとっていました(枢軸側へも若干の援助をしていました)。

1916年に第28代アメリカ大統領として再選を果たしたW・ウィルソンは、選挙時の公約であった<ヨーロッパの戦争への不参加>から立場を一転、1917年4月2日に開かれた議会にてアメリカの参戦を呼びかけます。

結果は民主党・共和党の枠を越え開戦賛成派が大多数を占め、2日後に決議通過、6日にはアメリカはドイツに宣戦布告をします。

ウィルソンの演説内容は、それまでヨーロッパでの紛争から距離を置いてきたアメリカが参戦しなければいけない理由を述べています。

その理由は;

1、ドイツ潜水艦による無差別攻撃。1915年のルシタニア号事件(イギリスの客船ルシタニア号がドイツ潜水艦によって撃沈され、128人のアメリカ人乗客が死亡)が有名。

2、ツィンメルマン電報事件。1917年、ドイツ帝国の外務大臣ツィンメルマンがメキシコ政府に送った暗号文書がイギリスに傍受された事件。内容は、アメリカが参戦した場合にドイツとメキシコが同盟を結びアメリカと戦い、戦争勝利後にはアメリカの領土を分割する提案だった。これがイギリス側に傍受されアメリカ政府に伝えられ、アメリカ国内の新聞等で発表された。

3、ベルギー侵攻でのドイツ軍による残虐行為(Belgium Atrocity)。1914年の開戦当時、ドイツはフランス侵攻に先駆けて中立国であったベルギーを侵攻。その際にドイツ軍による民間人への残虐行為があったされた。イギリスはこれをアメリカ国民の感情を参戦に向かわせるためのプロパガンダとして使用した。

4、ウィルソンが最も力説したのは、民主主義のために戦うというイデオロギーによる国民感情の鼓舞だった。枢軸側であったドイツ帝国もオーストリア・ハンガリー帝国も専制君主制の国家だった。連合軍側は、イギリスは王政ではあったが実態は民主主義制の形をとっており(英連邦の中で投票権のある国民にとっては)、フランスは民主主義国家であった。よってウィルソンは「アメリカが戦うのは人民のため」という大義を掲げた。

この後カーン氏は「では、別の角度から少々シニカルな見方も考えてみよう」とギアを切りかえます。

ここでは、アメリカが参戦した理由として以下の事実に焦点が当てられます;

1、イギリスとアメリカの間には金融面での強い繋がりがあった。1913年にウイルソンが承認して設立された連邦準備銀行が中心となり、アメリカはイギリス・フランスに莫大な融資をしていた。

2、イギリスによる非常に効果的なプロパガンダ展開。アメリカ国民の参戦へのセンチメントを高める目的でイギリスはアメリカ国内で盛んにプロパガンダを展開しました。ツィンメルマン電報事件や、ベルギー侵攻でのドイツ軍による一般市民への残虐行為や、ルシタニア号事件を祝うドイツ国民の様子を伝え、アメリカ国民にドイツに対する怒りを植え付けることに成功(ベルギー侵攻時の残虐行為は事実とされるが、ルシタニア号撃沈を喜ぶ一般ドイツ国民というのはイギリス側の捏造報道であったとしている)。

3、戦争で利益を得る層からの議会に対する(参戦を促す)ロビー活動。カーン氏はここで「すべての戦争がそうであるように、戦争の真の目的がここにある。アメリカが参戦すれば、兵器や軍需物資の大量注文が舞い込んで儲ける層が存在する。さらにはウォール街の投資家たちだ。すでに彼らは巨額の資金を連合国側に貸し付けていたので連合国側が負けると大損をすることになり、彼らはそれを避けたかったのだ」と解説しています。

カーン氏はこのあと、ウイルソン大統領の議会演説と、当時の議会では少数派となった参戦反対の意を唱えたG.ノリス上院議員の演説内容の比較しています。

これも非常に興味深い内容なので、よろしければ引き続き後編もご覧ください。

–以下、後編へ−

 

 

 

アメリカが戦争を起こす際のパターン分析 ー カーン・アカデミー教育動画「世界史 / 20世紀」より

カーン・アカデミー、「冷戦期におけるアメリカの軍事介入のパターン分析」動画紹介

 

カーン・アカデミーの教育動画が優れていることをご存知の方は多いと思います。

3,000本以上存在する閲覧無料の動画クリップは数学や物理にとどまらず、化学・芸術から金融など、多岐にわたる分野がカバーされてます。

今回は歴史の分野からの紹介。

正式には「世界史−20世紀−冷戦期のアメリカ軍事介入パターン(Patten of US Cold War interventions / The 20th century / World history /)」

世界史−20世紀の歴史~ではこの動画以前にも、冷戦(Cold War)朝鮮戦争キューバ・ミサイル危機ピッグス湾事件ベトナム戦争などが詳細に解説されています。

ここではその総集編として、それぞれの軍事介入に共通するパターンに関する言及がなされています。

冒頭にカーン・アカデミーの主宰者であり、大半の動画のナレーションを自ら執り行っているサルマン・カーン氏の言葉が素晴らしいです。

「いいかい、歴史を学ぶ際には事実とされている事柄も含め、全てを疑ってかかるように。 この動画で僕が言う事も含めてね! なぜなら歴史とは生き残った者によって編纂された記録だ。実際には裏で何が起こっていたかは誰にも分からない。

「大事なのは、その説明に納得できるか、ということ。だから僕が今からここで言うことをただ鵜呑みにしてはいけないよ。自分の頭で考えて納得できればそれで良い。そうじゃなければ納得できる解釈を自分自身で探し出すことが大切なんだ」 

 

この動画で彼が解説している内容を以下に要約してみました。

ここでは朝鮮、キューバ、ベトナムを事例に、冷戦期のアメリカの軍事介入のパターン解説がされています。

1、アメリカの軍事介入が始まる以前、これらの国はすべて他国によって占領状態、もしくは隷属状態にあった。ex) 朝鮮は実質的には日本の植民地だった。キューバはバティスタ政権の独裁体制下にあったが実態はアメリカの植民地状態だった。ベトナムはフランスの植民地だった。

2、その状況下では支配層や、それらと癒着して潤う少数の特権階級と、搾取される大多数の一般国民というふたつの階級に分断される。当然、一般国民の体制や政治に対する不満が高まる(真っ当なやり方で財を築く者も存在はしていたが、とも述べられています)。

3、すると独立運動への機運が芽生える。「宗主国や、ひと握りの特権階級に独占されている富を公平に社会に分配しよう!それが社会正義である!」–この考え方は共産主義のイデオロギーとピッタリ一致する。

4、キューバではフィデル・カストロ、ベトナムではホー・チ・ミンが独立運動の推進者として登場。朝鮮は多少事情が異なっており、すでに共産主義者による独立運動は存在していた。キム・イル・ソンはリーダーというよりも、当時共産主義運動をバックアップしていたソ連による後押しが強かったと思われる。

5、そして彼らは企業を国有化し、私有財産の没収と再分配などを標榜する。すると外国企業やそこで私財を築いていた特権階級が駆逐されることになる。

6、欧米の大資本にとってこれはマイナス。また、地政学的にアメリカがソ連に敗退することを意味するので「オーケー、じゃ方程式の反対側に立って力を均衡させなきゃ」とばかりに朝鮮ではシングマン・リー、ベトナムではディエム政権、キューバでは当初はバティスタ、そしてキューバ亡命者を支援して共産勢力との戦いを推進しようする。これらの人物はどれも皆あまり人望があるとは思われない連中だった。

7、ここでSK氏の個人的見解が挿入されます: ケネデイー政権当時、政策決定のためにケネディー側に提供されるキューバのカストロに関するアメリカの内部情報はかなり歪められていたように思える。実際のカストロは非常に人気があり、彼が行なった経済政策も富の再分配を実現していた。

8、以上、冷戦期のアメリカの軍事介入には共通するパターンが見受けられる。そのどれもが失敗、もしくは膠着状態のままで終わっている。ここで得られる教訓は重要だ。

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SK氏はかつてMITで数学とコンピューター・サイエンスを専攻し、その後ヘッジ・ファンドのアナリストの職に就いた経験のある人。そのせいか、ここでの歴史分析もちょっと数学的な香りを感じます。

教科書的な史実の無味乾燥な暗記に始終するのではなく、背景に流れていた人々の思惑のようなものを把握しようとするアプローチは、より豊かな教養として歴史を認識できるように思います。

他にも興味深いコマがザクザク見つかりますので、ぜひチャンスを見つけてもう2〜3編の紹介してみたいと考えています。

 

 

 

 

 

 

 

テスラ モデル3 納車式典の様子 (Tesla Model 3 Handovers)

イーロン・マスクが創造する企業ユーフォーリア

 

2017年7月28日(金)、カリフォルニア フリーモントにあるテスラ自動車の工場敷地で行われたTESLA MODEL 3 納車式の動画が興味深かったのでアップしました。

最初の50台のうち20台が試験車両として除かれ、残りの30台が初納車。新規オーナーはテスラで働く従業員が基本とのこと。

式典で壇上に立つイーロン・マスクはまるでロック・スターのようです。

聴衆の喜びに溢れた騒ぎぶりは、かつてマック・ワールドでS.ジョッブスと信者たちが共有したユーフォリアに近いものを感じます。

「一番のチャレンジは、現在抱えている多数の予約オーダーに応えるべく、新型のモデル3を迅速に大量に製造する事。これからが大変だよ。地獄へようこそ!(笑)。でもみんなはもうそれのベテランだよね、いいかい、地獄(過酷な状況?)を通り抜けなきゃいけない時の方法はひとつ。ただ突き進むのみ、だよ」

と壇上のEMが笑いながら言うと、なんと従業員たちは歓喜の声を挙げます。かつてS.ジョッブス時代のアップルを感じる部分。
(全ての企業経営者が夢見るであろう熱烈な企業ファシズムが浸透しているかのよう)。

翌 29日付け(現地時間)ニューヨーク・タイムズ紙でもこれを報道してますが、「多大なプレ・オーダーに応えることができるのか?それがテスラに課された課題」と批判的なトーン。

https://www.nytimes.com/…/bus…/tesla-model-3-elon-musk.html…

式典で壇上に立つEMはそれらの問題へのソリューションとして;

1、今年の暮れまでにモデル3を5,000台/week生産体制に持っていく。

 

2、ネヴァダに設立した世界最大のリチュウム電池工場のギガ・ファクトリー
(この工場ひとつで、その他の全世界のリチュウム電池生産量を凌駕。ギガ・ファクトリーを紹介したwired誌の紹介記事

 

3、「Super Charger」(急速充電スタンド)の設置数を2018年度中に現在の3倍に増設。世界で乗り回せる車となる。

「Super Chargerは単に急速充電スタンド。充電時間を気にしなければ今だって電源があれば世界のどこでも乗り回せるんだ(EM)」

 

また、リスクとして彼が言及したのは;「モデル3では1万にも及ぶ専用部品が用いられている。部品の供給元は2/3が北米、残りの1/3がその他海外から。供給される部品の中で一番納期の遅れるものに生産のスピードが制限されてしまう。現在はこの部分の改善に最大限の努力を集約している」と。

EMの説明によると、
「モデル3には8台のカメラ、12台の超音波ソナー、4台のレーダー、10テラバイトを超える性能のコンピューターが搭載されている。ハードウェア面は来たるべく全自動運転時代に完全に対応している。現時点で生産されている他のテスラ車種も同様。これは意外と知られていない事実なんだよ」と言ってます。

最後にEMは、「同価格帯クラスで、他のどの車種もこれ以上の性能と安全性を有する車はない」と自信たっぷりに言います。

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テスラ・モデル3の現地価格とスペック

グレードは2タイプ。 スタンダードが35,000ドル、ロング・レンジは44,000ドル。

 

以下、2タイプの性能比較;

Standard: 1回の充電での航続距離 220mile≒354km、0-60マイル加速 5.6秒、最高時速 130mph≒時速210キロ。

Long Range: (同上順)310mile≒500km、5.1秒、140mph≒時速225キロ

イーロン・マスク「AIの進歩は大量失業時代の到来。ベーシック・インカムの導入が必要となる」

「AIの進歩は大量失業時代の到来を意味する。ある種のユニバーサル・ベーシック・インカム制度の導入が不可避となるだろう。

「でも、産業経済活動から不要とされた人々が大量に発生する時代に、人は生きる意味をどこに見出せば良いのか?」
         
           ↓

「脳とコンピューターの融合に解決のヒントがある」−EM

 

 

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3回連続でEMのインタビューですが、大変興味深いのでまたひとつ。

2017年の2月にドバイで開催された湾岸諸国の首長や政府関係者向けと思われるWorld Government Summitというカンフェレンスでの発言から。

モデレーターが、「この場にいる各国政府関係者へ、未来に向けたアドバイスを3つ挙げてください」という問への答え。

最初の2つに関しては、すでに広く認識されている事実を復唱しているようにEMは話します;

1、AI開発の管理。人々に危害を与えないように政府が監視すること。

2、20~30年で自動運転が大勢を占める世の中になる。現在の3倍の電気が必要となる。それだけの電気が供給できる体制の準備。

と、ここまでは一般的に理解されている部分。しかし、

3、来たるべく大量失業にどう対応するのか? 答えはユニバーサル・ベーシック・インカム制度の導入。他に選択肢はないと思う。

人間にできて機械やロボットにできない仕事はほとんど無くなる。僕はそれを望んでいる訳ではない。ただ、そういう世界の到来が多分避けられない、と考えている。

AIによる生産物は大変優れたクオリティーのものがふんだんに供給されるようになる。値段も飛躍的に下がる(AI/ロボットに課税し、それをユニバーサル・ベーシック・インカムの財源にする。それでも企業は十分な利益を得られる、としています)。

しかし一番難しいのは、その状況で人々は生きる意味をどこに見出すのか?という部分です。多くの場合、人は職業に自身の生きる意味を見出している。この部分への対応を考えなくてはいけない。私たちが直面する大変難しい問題となるでしょう。

我々が望むような、希望の持てる世界を創って行くにはどうすれば良いのか?

 

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ここでEMは話題を「脳とコンピューターの融合」へ振ります。

1、ちょっとSFみたいな話になるけど、人はすでに第三レイヤーの脳を獲得している。それは一種のデジタル・サイボーグともいえる。
大脳辺縁系(感情や動物的本能を司る部分)、大脳皮質(思考や計画)、そして第3階層としてデジタル・レイヤーの存在。

彼が例として揚げたのが; 「グーグルで瞬時に何かを調べたり、地球の裏側の人と話をしたり、死んだあともSNSやEメールは残り、あなたの痕跡(ghost)は生き続ける」

2、我々はコンピューターをキーボード、またはタッチ・パッドでコントロールしているが、現状のスピードは非常に遅いもの。普通で10bit/sec、大目にみても100bit/secが限界だろう。

でもコンピューターは兆bit/sec単位でコミュニケートする。

生体(脳)とコンピューターとのインターフェースの伝達帯域幅が飛躍的にアップすることで、コンピュータと人間の共生や、コントロールの問題、無用性の問題、それらへの解決の糸口が見つかると思います。

(ちょっと「お気軽」な感じのモデレーター氏、言葉を失って、、、「あーむ」と唸り声)

EM: 多分に深遠な内容で恐縮ですけど、、、。

 

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最後の部分をどう捉えれば良いのか、、、、。

本来ならこのお気楽モデレーター氏は「コントロールとはどういう意味ですか?」と訊くべきだと思うのですが、意図してなのか単に興味が無いのか話の方向を変えてしまいました。残念。

コントロールと無用性への解決策、という言葉から想像されるのは、キャメロン・クロウの映画「Vanilla Sky」 のような人工冬眠カプセルで眠らせて、希望通りの人生を生きている夢を見させる会社の話。

そうなると、近未来では失業者はカプセル行き?
大量の人々がカプセルの中で眠りながら、夢の世界で生きる時代の到来。

もし、EMがこの場でほのめかした解決策へのヒントがこんな方面を向いていたのだとしたら、、、ちょっと怖いですね。

(すでにイーロン・マスク氏は2016年に設立されたNeuralinkの創立メンバーのひとりとして名を連ねており、この会社は脳とコンピューターとの融合を研究しているそうです)

 

(抜粋部分は動画の22m35s辺りから)

AIは人類が直面する最大のリスク – 2 (イーロン・マスク)

「ひとたびAI開発の現状が認識されれば、人々は大変な恐怖を感じるだろう。それほど深刻な状況なのです(EM)」

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先の投稿に続いて、同じNGA会議(全米州知事連合?)の最終日のElon Muskの「AIの脅威」に関する応答から、興味深い部分をもうひとつ抜粋しました。

 

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アリゾナ州知事の質問:「まだ何ものと判断もつかない分野(AI)で、我々(政治家)はどのようにして規制基準を設けていけば良いのか?」

以下、EMの応答:

1、まず現状認識だ。現在のあなた方はそれすらできていない。

2、チェック機関の設立。目的はAI開発の現状を認識し評価すること。

3、そして規制の導入、簡単な事です。

 

そして彼は以下を付け加えます。

4、当然、AI企業は反対するだろう。僕の会社は反対しないけどね。彼らは、そんな事をしたら進歩が止まるだの、中国へ逃げ出すだの、タワゴトを言いだすだろう。でも実際には彼らはそんな事をしません。ボーイングが米国から出ていったか?出てないですね、アメリカ国内にとどまってます。自動車産業だって同様。
規制をかけると規制のゆるい国外へ逃げる、なんていうのは非常に高慢な態度だと思います。

 

最後にEMが言ったのは:

5、目的は政府レベルでの注意喚起(awareness)です。ひとたび「awareness」が向けられれば、人々は大変な恐怖を覚えるはず。

それ程、深刻な状況なのです。

 

以上
(抜粋画面は動画の1h20m44s辺りから)

 

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以下、完全な私感で大変恐縮なのですが、メディアやビジネス・ニュース等で取り上げられる「AI」は、それいけ乗り遅れちゃいけないビジネスチャンス的に、一種のバズワードとなっています。

でも、この分野の最先端に身を置くEM氏の頭はすでに何光年も先を見据えているかのようです。

イーロン・マスク氏も共同設立者として昨年(2016年)立ち上げられたNeuralink(2016設立)は脳とコンピューターの融合を研究する会社。

どうせこの分野で悪が台頭するのなら、自分たちが先頭を走ることにより、台頭してくる悪を抑え込もうとしているのかもしれません。

 

以上
(抜粋画面は動画の1h20m44s辺りから)

 

AIは人類にとって現在最大のリスクだ。 イーロン・マスク

AIは人間のやれることは全てできるようになっている。それも人間の能力をはるかに超えるレベルでね。もし、そんな力が自由に使えるとしたら、あなたは何を考えますか? イーロン・マスク

 

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先週(2017年7月13日〜16日)ネヴァダ州で行われたNGA(党派を超えて全米の州知事が集うコンフェレンス)での最終日、テスラスペースXの設立者でもあるイーロン・マスク氏が登場し、その動画がアップされています。

講演の後半では各州知事たちとの質疑応答の時間が設けられ、コロラド州知事から、「AIは現在人類が直面する最大のリスクとあなたは言っているが、それに対して我々は何をすべきか?」と問われた際のイーロン・マスク氏の応えを以下に要約しました;

イーロン・マスク

・まずは現状把握から始めなくてはいけない。大半の政治家はそれを怠っています。

・政府の役割のひとつは、一般の人々の幸福の実現にあると信じている。だから規制が必要なのです。

・昨年、Googleの子会社が開発したAI(Alpha Go)が囲碁の世界チャンピオンを打ち負かしました。囲碁は非常に難易度の高いゲームで、コンピューターが人間を負かすのはまだ20年先と言われていました。今なら世界のトップ50人を同時に打ち負かす事だって可能です。

・すでにロボットは完成の瞬間から二足歩行を可能としています。なんの訓練もなしにね。

・このように、現在のAIの進歩のスピードは脅威的なのです。

・だが、1番の脅威はネットワーク内で活動する「DEEP INTELLIGENCE」です。

 

以下、彼が例として挙げたげた話の概要;

1、仮に投資目的でAIを使ったとする。目的は保有株(もしくはポジション)の価値の最大化。

2、ひとつの方法として戦争を起こす、というやり方がある。

3、手持ちの防衛関連株をロング・ポジション(将来の値上がりを期待)、民需株をショート・ポジション(値下がりを期待)にしておく。

4、そこで戦争を起こす。
Fake Newsを流し、メールアカウントを乗っ取り、Fake プレス・リリースを流すなどの情報操作を行えば戦争は起こせる。

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ここで彼は「おっと、どうやら墓穴を掘っちゃったね。僕はあくまでも仮定の話をしているだけだよ」と言いながら、引き続き以下の例を挙げました。

2度目のマレーシア航空撃墜事件を覚えてますか?ウクライナとロシア国境地帯で起きた事件です。あれによってロシアとEUの関係は極度に緊張しました。
もし、上記のような投資目的でAIが使われたとしたら、、、」

1、まずはマレーシア航空の飛行ルート・サーバーにハックし、飛行ルートを紛争地域上空に変更する。

2、偽情報で(「anonymous tip」と言ってます)旅客機の真上に敵航空機が飛んでいる信号を送りつける。

そうすれば、後はご存知のような結果となる、と身振りで、、。

(会場はし〜んと静寂。その後、苦笑の声がチラホラ)

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EM、一般には認識されていないリスクの実態を肌で感じているのでしょう。

抜粋の部分は動画の1h16m28s辺りからです。

ピーター・ティール;「エンジニアとアーティストが未来を創る」  

Peter Thiel 氏の講演動画より

 

ペイパルの共同創立者でシリコンバレーを代表する投資家のピーター・ティール氏の講演の内容がYouTubeの中で数多く紹介されています。

その中のひとつ、2013年度のSXSWコンフェレンスで行われた講演よりのピックアップ。

この講演は、起業家を目指す人々に向けたものですが、その中で日本の置かれた状況をで解説してる部分が興味を引きました。

縦軸(y軸)の上部に「将来に希望」、下部が「将来を悲観」、横軸(x軸)の左側に「明快な目的を持つ」、右側に「不確実で何をしたら良いかわからない」、という表を掲げています。

 

バブル崩壊以降の日本は(ヨーロッパも)右下の「将来に悲観」&「何をして良いかわからない」ゾーンに位置してます。

現在の中国は左下、「将来に悲観(高い貯蓄率)」&「目的は明快(先行国のコピーによる発展)」ゾーン。

ティール氏は別のレクチャーで「グローバリゼーションとは、先行者の成功事例をコピーして追いつく活動」と定義しています。

同じ表を用いて、彼の本業の一つでもある投資コンサル(ヘッジファンド運営)っぽくポートフォリオ解説をしている部分では、日本の位置する「将来に悲観」&「何をして良いかわからない」ゾーンでは「貯金や保険を買うしかない」。

ひるがえって、左上の「将来に希望」&「目的が明確」ゾーンでは、「工学とアート」が栄え、そこに向かう人々が増える。

Another way to look at the determinate vs. indeterminate question is through the lens of substance vs. process. What people do and what technology they build will depend on how they view the future. From an indeterminate perspective, they won’t know what to build. There’s nothing that specifically looks promising; it’s all just a distribution. So they will think less substantively and more procedurally. You want to have the right process for navigating the distribution. This tracks the HP board debate we talked about earlier: it’s Perkins’ old-school substance (lets talk tech and engineering) versus Dunn’s process. If everything is indeterminate, it’s presumptuous to think that the board could think or know anything about the future. How each quadrant shakes out in practice looks something like this: Optimistic, determinate: Engineering and art. Very specific engagements. Optimistic, indeterminate: Law and finance. Law is a process of applying specific rules, not a certain substantive result. You assume that by following the process you end up making things better. And finance is pretty thoroughly statistical. Pessimistic, indeterminate: Insurance. You can’t make money but you can protect against expected losses. Pessimistic, determinate: Wartime rationing.
H. Substance vs. Process

 

ここでのシール氏の論旨は、起業の目的を金儲けだけにとらわれるのではなく、この「工学技術とアート」のゾーンの繁栄を目的とすることこそが、より良い世界を築く、と語っています。

表で言い換えれば、「未来に希望を持ち、人々が明快な目的意識を持てる社会」の実現ですね。

外見は旧ナチ親衛隊将校のようでちょっと怖そうだけど、実はストレートで熱いハートの持ち主なのが伝わってきます。

ちょっと吃りながらの独特な彼の話し方は声の質も良いし、論旨が非常に明晰なので聞いていてスカッと気持ち良いですね。

 

https://youtu.be/iZM_JmZdqCw?t=10m44s